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安全目標は羊頭狗肉(上)、田中・原子力規制委・委員長7/17② [原子力規制委員会、指針・基準]

新安全基準は、安全目標として「事故時のセシウムCs137の放出量が 100T(テラ・兆)Bq を超えるような事故の発生頻度は、100 万炉年に1回程度を超えないように抑制されるべきである」を掲げています。100T(テラ・兆)Bq以下なら、原発敷地内に深刻な汚染は限られ、「帰還困難区域」を作らずに済むと試算されています。しかし、これは7機ある柏崎刈羽原発のような複数機ある原子力発電所では、守られことのない羊頭狗肉の安全目標であると7月17日に規制委の田中委員長の記者会見で明らかになりました。

原子力規制委は原発の安全目標を本年2013年2月20日の会議から議論を始めています。新基準の検討の論議の中で「安全目標を決めないで、安全規制がどうのという話があり、御意見もちょっと気にはしていたんです。(田中委員長)」旧原子力安全委員会での2006年までの論議、結局、規制には取り入れられなかった論議を踏まえて、始まりました。

安全目標をめぐる主な論点として
1. 安全目標の位置付け(「基準」ではなく「目標」)
2. 放射性物質による環境への汚染に関するリスクの取扱い
3. 複数基の発電炉が立地するサイトの取扱い
4. 新設炉と既設炉で目標値を分けるべきか否か
5.核燃料サイクル施設等の取扱い
を挙げていました。5回、検討の場がありました。4月10日のまとめでは

1の安全目標の位置付けは、「原子力規制委員会が原子力施設の規制を進めていく上で達成を目指す目標」。

4の新設炉と既設炉を分けるべきかは、「バックフィット規制の導入の趣旨に鑑み、現状では安全目標は全ての発電用原子炉に区別無く適用するべきもの」

2の放射性物質による環境への汚染に関するリスクの取扱いは「放射性物質による環境への汚染の視点も安全目標の中に取り込み、万一の事故の場合でも環境への影響をできるだけ小さくとどめる必要がある。」

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「具体的には、世界各国の例も参考に、発電用原子炉については、・事故時のCs137 の放出量が100TBq を超えるような事故の発生頻度は、100万炉年に1回程度を超えないように抑制されるべきである(テロ等によるものを除く)ことを、(安全委員会のH18の見解、炉心損傷頻度(CDF)は1万炉年に1回程度、格納容器機能喪失頻度(CFF)は10万炉年に1回程度に)追加するべきである」

5の使用済核燃料の再処理施設など核燃料サイクル施設等の取扱いと3の複数基の発電炉が立地するサイトの取扱いは、先送り。
「残された論点に関する議論を含め、安全目標に関する議論は、継続的な安全性向上を目指す原子力規制委員会として、今後とも引き続き検討を進めていく」

ところが、3の複数基の発電炉が立地するサイトの取扱いは、新規制基準に基づく審査と同時に直面することになります。
日本の17ヶ所(福島第一を入れて)の原子力発電所で1基だけは青森の東北電力・東通原発と茨城の日本原子力発電・東海第二原発だけです。
2基が福井県の敦賀原発、石川県の志賀原発、島根県の島根原発、鹿児島県の川内原発。
3基が北海道の泊原発、宮城県の女川原発、静岡県の浜岡原発、福井県の美浜原発、愛媛県の伊方原発、
4基は福島県の福島第二原発、福井県の大飯原発、高浜原発、佐賀県の玄海原発。柏崎刈羽原発が7基です。福島第一原発が6基でした。

3の複数基の発電炉が立地するサイトの取扱い問題に、安全審査と同時に直面することになります。

1基ごとの安全目標なら、柏崎刈羽原発は7基・機あるから、1基で100TBqならプラント・発電所全体では「放出量が700TBq」。発生頻度は、100万炉年に1回程度が7回程度になる。
プラント全体での安全目標・100TBqなら柏崎刈羽原発の1から7の各号機の安全目標は約14TBqと他のプラントの号機より厳しくなる。発生頻度は、100万炉年に1回程度が7分の一の約1000万炉年に1回程度になる。

その点が7月17日の記者会見で質疑されました。

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○記者朝日新聞のオオムタです。
新規制基準に基づく審査が始まりました。それに当たって、弊紙の社説にも書いてありましたけれども、集中立地あるいは複数基が稼働することのリスクをどのように規制委として考えているのか。

例えば泊の1~3号機の全部を動かして、同一の原因で3基が一遍にシビアアクシデントに近い状況になるとか、そういうことになった時に、対応がとれるのかとか、あるいは1基がシビアアクシデントを起こした場合、別の2基の対応はとれるのか。更に言えば、大飯と高浜のように、別のサイトであっても、15kmも離れていないところで、複数基が稼働することに対して、それでもいいのかどうなのか。

個々の原発の規制基準というのは、もちろんできているわけですが、福島第一原発の事故の教訓からいうと、複数立地、集中立地の怖さをまざまざと我々は感じたわけですけれども、そこのところを規制委員会としてどう考えるか。国民に対しての説明がそこでなされているかということに関していうと、疑問があります。今後、何か御検討されることを考えておられるかどうか、その辺りを教えてください。

○田中委員長 
御指摘の点は、既存の原子炉が建っているわけですから、そういうことも含めて、答えが非常に難しいところがあるのです。これから建てるということであれば、いろんな配慮もあるかも知れませんけれども、今あるものについては、昨日の議論でもあったように、北電の答えだと、泊1~3が同時にそういう状況になっても、対応できるように考えていますということで答えがあったと思うし、規制サイドとしては、今、そういうことを要求しているということです。

距離が近いとか、何基ならいいのかという問題は、新規であれば、今後いろいろと検討すべきところがあるかもしれませんけれども、今の状態で、それについて明確に答えを出すというか、複数立地のよしあしを、我々の立場で言える状況ではない。

ただ、前にも申し上げましたが、アメリカもこれまでは3基だったのだけれども、4基目を作っているところがありますので、必ずしも世界の標準から見ると、多いわけではない。福島第一は6基ですから多いですけれどもね。柏崎刈羽もそうです。

今、御指摘の気持ちは分かりますけれども、すぐには答えが出ない。だから、複数立地に対しても、対応できるような規制、対応を求めていくというのが、今の私たちのスタンスです。

○記者 
つまり新設なら考えるけれども、既設についてはということでいうと、正にバックフィットしてこなかった、過去の規制と似通っているような気がします。安全に対しては、既設であろうが、新設であろうが、関係ないはずです。今、安全という知見、安全を確保するという観点から見た時に、複数稼働がどうなのか、どういうふうにこれは考えているんだ、これはこう考えるべきだということは、規制委として当然示さないと、福島第一のあの事故の教訓を生かした規制とは考えられません。

例えば同時に動かすのは、1サイト1基ということも、選択としては考えられます。事業者にとってどうかということは別にして、規制サイドとして、そこのところはどう考えるのか。国民に対して、複数立地、複数稼働、あるいは集中立地という問題については、規制委員会はこう考えるんだというものを出さないと、国民の負託に応えられないのではないかと思います。

○田中委員長 
そういうお考えもあるでしょう。先程の繰り返しですけれども、今は複数基が建っているという現実を踏まえて、それに対して、きちっとした対応をしていただくことが、私たちの答えです。個人の意見としては、拝聴しておきます。規制委員長として、個人の意見として拝聴しておくことに、とどめておきたいと思います。

○記者 
規制委員会の議題として、そういったものについて、取り上げることはしないということでよろしいですか。

○田中委員長 
御要望のような趣旨では、取り上げません。ただ、更田委員会の中でも、複数立地の問題は議論しているわけです。ずっとフォローしておられるのがどうか分かりませんけれども、そういうことです。



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○記者 
先程の質問に補足して伺います。まだ確率論的リスク評価を取り入れておられませんけれども、集中立地というのは、いわば卵を沢山、1つのかごに入れるようなもので、そのときのリスクという形で見たら、これは明らかに大きくなるわけですね。そうすると、1個1個、同じリスクに考えていいのかと。一つ一つの炉についてですね。つまり、絶対論的リスク評価ではなくて、確率論的リスク評価をもしとれば、集中立地というのはやはり大きな論点として考えなければいけないことになるのではないかと考えるのですけれども、そこの所はいかがお考えでしょうか。

○田中委員長 
1個より3個の方が壊れるリスクが高いというのは、普通に考えればそうですね。だからといって、それがだめかというふうには、一概には言えないわけです。

だから、いろいろな技術がありますね。車もほとんど走らないで、1時間に1本ぐらいしか走らなければ安全性は高いと思いますけれども、そうもいかないし、都内のJRだって、3分置き、5分置きに走っていますけれども、田舎に行けば、1日に何本しか走っていないというのもあるわけで、だから、そういうお考えは分からないことはないけれども、確率論的リスク評価というのは、そういうふうに使うものではないのだと思うのですよ。安全の目標というのを私ども、一応、議論したのですが、そういうこととの兼ね合いもありますので、PRA(確率論的リスク評価)自身は今後導入して、きちっとそういうことを踏まえたバックフィットの仕組みも作っていこうということで、今、検討しています。

ただ、全部一遍にはできないところもありますので、そういう方向では行きますけれども、御指摘は分かるけれども、直ぐに、はい、そうですかと、全てアグリーできるようなところでもないというところですね。

○記者 
直ぐにということを必ずしも言っているわけではないのですが、例えば、福井県で言えば、10基以上の原発があるわけですね。そうすると、同じように1炉について、シビアアクシデントの確率を100万年に1回以下というふうに抑えたとしても、10基あれば10倍になるわけですね。10基もし動けば、あるいはそこに存在することによって、アクシデントの確率が上がるかもしれないと考えると、他の1基しか動かさない原発が仮にあったとしますね。そこに比べると、10倍のリスクを福井県の県民は、10基動けばですよ、それでもやむを得ないということになるのかということをお尋ねしたいのです。

○田中委員長 
若干お話にトリックがあるような気がして答えにくいのですが、福井県というふうになぜ地域を限ったかというところがあるのですね。世界全体で、地球全体で幾らとか、そういうこともあるわけで、アメリカは100基もありますしね。日本でも今、50基あるわけですね。ですから、そういうことを含めて考えていかなければいけないのだと思いますけれども、算術の問題ではないと私は思います。

○記者 
そこで、なぜ算術の問題でないのかというのが私は理解できないのです。つまり、10基あれば、当然10倍のリスクになるであろうと。そうすると、許容されるリスクはさらにその10分の1にすべきとか、例えば、そういうことだって考えられるのではないか。つまり、1炉1炉だけで考えていって、それで十分なのですかということをお尋ねしているのですね。

○田中委員長 
個々の炉だけを考えているわけではないのですね。だから、そういったものが同時に起こる、福島でそういうのが起こりましたから、そういうことも当然考えてはいますけれども、そう単純に、そういうことで判断しているわけではないということです。

○司会すみません、御質問、最後でお願いします。

○記者 
ですから、規制委員会がそういった問題をどう考えているのかということを見えるように議論をしていただきたいということを御要望として申し上げておきます。



安全委員会では規制に取り込めなかった安全目標を、規制委では正式に取り上げたのは良いことですが、羊頭狗肉ではないでしょうか? 続く

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