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日本の原発は全部なまず付き、地震との複合した原発核災害への備え① [原子力規制委員会、指針・基準]

ロシアのチェルノブイリ事故、米国のスリーマイル事故、この核燃料がメルトダウンし放射能が撒き散らかされた核災害は、他の災害、天災と一緒に起きていません。東電フクイチ核災害は、大地震・大津波と複合して起きています。このように他の災害と複合して核災害が起きたら、どうやって人々を被曝から護るか・核災害防災に国は備えてきたのでしょうか?全く、何の準備もしてこなかった?地震の防災対策、原発の防災対策と別々で、複合して起きるとは全く考えてこなかった、想定外だったのか?調べてみました。
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2008年

発端は、2007年7月のの中越沖地震と柏崎刈羽原発の被害でした。翌年2008年に保安院・防災課は「地震以降、原子力施設への影響及び避難の必要性の有無というのが、大規模自然災害時における周辺住民の大きな関心事・・自然災害下においても原子力防災がうまく動くということが非常に重要」ということで、調査と立案に取り掛かります。
自然災害( 地震、風水害) が発生している時に、原子力災害が発生した場合、複合災害についての基礎的調査、複合災害の想定シナリオ、従来の防災対策の問題点などの洗い出し。自治体の地域防災計画には地震対策編、風水害対策編、原子力災害対策編が別々に定められていますが、原発立地県でこれらがどのように関連付けられているのか。海外での事例の調査などです。

そして効果的に災害対応を実施するにはどうしたら良いか、地震対策、風水害対策らと原子力災害対策が食い違いが生じた場合は、何を優先させるかなどを討議しました。「一番議論になったのは・・自然災害が起きて、それこそ何百人、何千人が命の危険にさらされ、あるいはもう既に死亡者が出ている事態の中で、片一方で、例えば原子力施設(原発)で放射性物質が漏れたとかそういうものがあったとしても、恐らく命の危険にさらされている方が最優先になるでしょうから、そういう優先順位という考え方がきちっと整理されない限り、この問題は解決しないだろうということで、大議論をやったんです(野村 保)」
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2009年
 そして2009年4月に留意事項(素案)「原子力災害等と同時期又は相前後して、大規模自然災害が発生する事態に対応した原子力防災マニュアル等の作成上の留意事項(素案)」にまとめました。この素案で、大規模自然災害が原子力防災体制に与える影響と想定した事態は、今回の東電フクイチ核災害で生じています。逆に見落とした事態もあります。

 例えば、想定○大規模自然災害により、オフサイトセンターや災害対策本部等への要員の派遣・参集、緊急時活動等に支障が生じる可能体制性がある。
→オフサイトセンター・現地対策本部構成員として13省庁40名が予定されていましたが、実際は3省庁21名。

想定○大規模自然災害により緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)が被災する可能性がある。
→12日まで自家発電できず機能せず。代替施設は南相馬市の市庁舎を予定していたが、市庁舎を地震・津波による災害対応に使っていて福島県庁に16日に移転。

想定○安定ヨウ素剤は処方(投与)する際の主導できる医師の予防服用を行う場所等への派遣等とセットで保管を考える必要がある。
→医師がいないので、手元にヨウ素剤が届いてもあっても予防投与されなかった。医師が確保できないので甲状腺被ばくやスクリーニング調査ができてない。

想定○大規模自然災害により、モニタリング機材等が破損し、必要なモニタリングデータを取得することが困難となる可能性がある
→福島県が原発周辺に設置していたモニタリングポスト24基中23基が使用不能。これでフクイチから流出した放射能がどこに漂っているか、風向きを測れなくなっています。迅速的確な避難指示が出せません。
当時は、津波などで押し流され、流木などにつかまっていた人やガレキにはさまれた人などが多数、救助を求めていたと思います。放射能雲・ブルームが流れていかない地域は、救助活動が行えました。しかし、それが判らない。それで、救助にあたる人たちも含め全員が避難です。逆に、流れて行った飯館に多くの人たちが避難して、被曝しています。

 2008年にフクイチでの実施された防災訓練では航空機モニタリングが行われています。いざ本番の3.11では、それは行われず、16日になってから文科省が移動測定車を3台おくってモニタリングが始まっています。(新潟県は中越地震で使えなくなった経験から対策してあって中越沖地震の時にある程度機能したそうです。)
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見落とし・・電話など通信網が遮断、一部しか働かなくなる。フクイチから炉の状態、原発の状況の連絡が取れなくなる。オフサイトセンター・現地対策本部から関係市町村、県への連絡がとりにくく、結果的にはは東京の方から原子力安全・保安院、更には警察や消防の方から市町村に対して連絡をとる。一方、その連絡を受けた市町村の方でも住民への連絡手段が限られて、まずは防災無線、更に防災無線もなかなか厳しいところには、車で連絡をしている。
この素案は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力防災小委員会に2009年に出され、討議されて、保安院の防災課が国の関係機関とか自治体から意見を聞いて、案を練ることになりました。



2010年
 それが、2010年10月の原子力防災小委員会に報告されています。

それをみると、「非常にネガティブといいますか、反発に近いコメント」一つは、地方自治体に体制の充実、負担を一方的に求めているという反発。一つは、保安院が保安院の所管でない分野に口、手をいれたという縄張り争い的反発。

 一つは、地震など自然災害があたかも原子力災害を引き起こすのではないかという”誤解”を招く懸念がある。従前は、そういった自然災害にはしっかりと原子力発電所などは備えているので、そういった原子力災害が自然災害によって引き起こされないと地元に説明している。にもかかわらず、地震などが原子力災害を引き起こすような“含み”のある政策は非常に困るという原発を推進する側からの反発です。

 これに対して保安院は、①原子力施設は、あらゆる自然災害の発生を想定した上で、それでも安全確保ができる設計となっており、自然災害が原子力災害を引き起こす可能性はほぼゼロに等しい。②偶発的に同時期に自然災害と原子力災害が発生する可能性については、原子力災害が単独で発生する確率よりもさらに低いことは科学的に自明。まず原発推進の邪魔はしませんと表明して、今後は

①正規の手続を踏んでアプローチ「国全体の防災基本指針を定める中央防災会議でも、こういった問題についてしっかり方向性を出してもらうといったところがあって、初めてほかの国の関係機関や自治体の方々も一緒になって手を組んでくれるといったところがございますので、この中央防災会議の事務局をやっている内閣府に対して相談をしていって議論を持ちかけよう、働きかけをしていこう」

②「運用上の工夫とかアイデアとかといったものでより効率的、またより迅速に防災対応ができることというものはどんどん盛り込んでいって、・・万が一、同時期に複数の災害が発生した場合にも現行の防災体制のままでも、より高い効果が得られるよう、効率的に対応できるような方向性でマニュアルをまとめる」
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この5ヵ月後に東電フクイチ核災害です。  続く





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