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生涯の累積被ばく線量を100mSv未満にするという食品汚染規制案 7/25版 [放射能検査と摘発、食品、水]

2011年7月25日に印刷、小針店で配布


東電フクイチ核災害を受け、厚労省は食品や飲用水などから摂取する放射能による内部被曝に対処するため、3月17日に食品衛生法により、放射能汚染された食品の流通を規制する暫定基準を設定しました。放射性セシウムなら年間被曝線量が5mSv以下です。この基準の科学的根拠(お墨付き)を得るため、食品からの被曝による健康影響評価を食品安全委員会に諮問していました。

 委員会の検討ワーキンググループ(WG)会合で「外部被曝と食品などからの内部被曝を合わせて生涯で累積100mSv(ミリシーベルト)未満(ガン発生の確率が1%、ガン死で0.5%上昇)」「放射線による被爆の影響は大人より子供の方が大きい可能性が高いことを考慮すべきだ」とする見解になりました。内部被爆でのきちんとした研究がない、100mSv以下の被曝影響での確実な科学的データがない、危険性が高いと言う研究やそうでもないという研究が混在していることが理由です。これが26日(火)にWGの正式見解にまとまり、食品安全委員会にあがり、正式決定され厚生労働省に答申される見込みです。

 地球ができた時からある放射能や宇宙線による被曝(日本人平均、約1.5mSv)やCTなど医療被曝、それ以外の原発などに由来する被曝は生涯累積で100mSv未満。、現在の暫定基準値は、放射性セシウムなら食品による年間被曝線量が5mSv以下になることが前提となっているので、見直し必至。

 しかし現行法では、この種の原発などに由来する被曝は年間1mSvの規制値ですから、生涯累積で100mSvは高いようにも見えます。子供のほうが影響が大きいということが、例えば0~18歳までの1mSvは大人の3mSvとみなすといった措置になれば、概ね現行の規制と同じです。ただこの種の被曝の現状、実態は原発周辺で0.05mSv位ですから、実際的には被曝量は増えることになると思います。

 年間に100mSv以下なら安全という東京大学放射線科の中川・准教授、佐々木 康人氏 (社)日本アイソトープ協会 常務理事(前 放射線医学総合研究所 理事長)らが専門参考人で加わっています。ですから内部被曝は年間50mSvなどになった可能性があったのです。農薬や食品添加物での規制、安全性を長年取り扱ってきた検討WGの委員が、農薬などでの考え方、一生涯、毎日摂取しても危険性が顕れない量という枠組みで考え、生涯での量で決めたと思います。

外部被爆が多い福島や関東の人は?

WG案には「評価結果は、生涯における累積縁量で示したものである。仮に、特定の1年間に数mSvの披ばくがあったとしても、・・生涯における追加の累積線量として(外部被曝と内部被曝を合わせて)おおよそ100 mSv以内か否かについて検討すべきである。」とあります。

 それで東電フクイチ核災害で出された放射能が多く降り積もった地域、福島や関東では除染などなければ外部被曝の線量が数十年にわたって数ミリシーベルトになります。降り積もった放射性セシウム137の半減期は約30年ですから、高い放射線量、外部被曝は”特定の1年間”ではすみません。食品安全委員会の「外部被曝と内部被曝を合わせて生涯で累積100mSv未満」案は、これらの地域の人々の不安・心配を深めることになります。

 そこで福島県放射線リスクアドバイザーを勤め、現在は福島県立医大の副学長に就任した、年100mSv以下安全論の山下俊一先生は福島県民の内部被曝について、福島県独自の評価基準、内部被曝が1mSvを超えなければ健康への問題はないと判断するとの独自基準を設定、検査を受けた福島県民に安心を与えるそうです。

6月27日から始まっている県の健康診断・内部被曝検査、ホールボディーカウンターや尿などの検査で体内にある放射性物質の量を測定します。その測定値の生データは受診した人には渡さず、算出される3月11日から検査日までの数ヶ月の内部被曝の線量(預託線量)が1mSvを超えなければ健康への問題はない、超えても「すぐさま影響が出てくるものではなく、注視する」とのご宣託を下し県民に安心を与えています。

健康診断・内部被曝検査を受けるには、測定値の生データは山下先生らが福島県立医大で管理、活用し、受診者には”ご宣託”だけという合意書にサインしなければならないと念を入れて、安心を下賜しています。

 受診した人のプライバシーである検査測定データを渡さない、例えば他の先生に相談しセカンド・オピニオンを得ることができないようにしているという点を見ても、医療ではありません。また3月11日から検査日までの数ヶ月分だけですから、その後の内部被曝は考慮しない、無視という無茶苦茶なものです。


広島・長崎の内部被爆者

 そもそも、中川先生、山下先生や佐々木康人氏らの見識は、広島・長崎の被曝の研究結果を基礎とします。原爆による被曝は①ピカドンで放出された放射線による外部被曝、これは爆心地から2~3キロの線量ゼロになる地点以内で、ピカッとなった瞬時の外部被曝です。②キノコ雲からの黒い雨に含まれた放射能による被曝、主に内部被曝③雨では下に落ちず、漂って降下した放射能による被曝、主に内部被曝です。②と③は直径20キロ程度の広がりと考えられています。

 敗戦後、占領した米軍は両市で原爆の効果の調査を始めます。炸裂時には遠方にいて①の外部被曝はしていないのに、後日、身内を探しに入市し具合が悪くなるなどの例を知ります。降伏後広島入りした記者がロンドンのデイリーエクスプレスに、「ケガを受けなかった人が30日後も不可解かつ悲惨に亡くなり続けている」という趣旨の、ニューヨークタイムズに「人々はいまも1日100人の割合で死んでいる」という報道をしました。これでは、原爆を兵器として使いにくくなります。
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 戦争は、他国に自国の政治的意思を武力で強要する外交、政治行為です。日本政府を米国政府の政治的意思に従わせてしまえば、兵器で殺傷する必要もなくなります。大砲は打ち方ヤメで、人を殺さなくなります。しかし、原爆は戦争終結後も放射能で内部被曝で殺傷を続けます。原爆を使う戦争は、未来永劫にその国の人々を殺傷し続け抹殺するぞという意思を表すものものになります。戦争が武力外交という政治ではなくなります。ですから、原爆による放射能が内部被曝で殺傷を続ける事実が広く認められれば衆知になれば、原爆は政治的には使えない兵器になります。

 それで、米軍は広島・長崎の被曝調査では②や③を認めない、被曝は①の外部被曝だけという姿勢を採ります。それで、内部被曝の研究が進んでいないのです。米国は1950年に内部被曝の調査研究を打ち切って封印しています。

 日本政府は、原爆手帳の交付では①の外部被爆だけを認めています。日本政府も内部被爆が研究されることを望まない。米国が望まないし、その害が明らかになれば、原爆手帳の交付が増え、財政負担が増します。
 こうした米国、日本の政治的思惑で内部被爆を無視した歪んだ知的体系を学び、内部被爆で苦しむ人を見ない研究を進めることで、政府の歓心を得て中川先生、山下先生や佐々木康人氏らは立身出世を遂げたのです。

 研究者によれば、枕崎台風(1945年9月17日)などの降雨、3ヶ月間で広島900mm、長崎1200mmという大量降雨で放射能が洗い流されたそうです。100から1000分の一に減ったと、半減期30年のセシウム137でみれば約200年から300年早送りされたのです。それで広島や長崎は復興できたと。そのような僥倖を当てにせず、200年、300年と続くであろうフクイチ核災害での内部被爆から子孫を守る術を築く時です。


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