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原発からでる放射能 運転中、ベント時・・水に溶けやすい放射能 [被曝管理]

原子炉冷却水中の放射能 (加筆版)

原発では法令で定められた線量率、空気などの濃度限度、放射性物質によって汚染された物の表面汚染密度限度などの規制値を超さないように、各原発事業所または原子炉毎に「保安規定」を定めています。

原子炉冷却水にも放射能が含まれています。核燃料の被覆菅のピンホールから漏れ出たもの、被覆菅の表面に付着した核燃料の微粉に由来するものです。(燃料製造時に粉末状になったウランが被覆管外表面に付き、そのウランが運転中に核分裂をします。原子炉で生成する放射能とその冷却水への溶け具合は、下部の岩崎教授の欄を参照)

 柏崎刈羽原発では、原子炉の冷却水中の放射性ヨウ素131濃度は水1gあたり1.3×10の3乗ベクレル、排気筒からの放出管理目標値は年間2.3×10の11乗ベクレル。沸騰水型BWRなので原子炉の放射能混じりの蒸気で蒸気タービンを廻し発電機を稼動します。タービンの回転軸は密閉できません。少量ですが水蒸気が漏れ出します。それで、年間で冷却水で約177トン相当の放射性ヨウ素131が、その他に放射性希ガス(クリプトン85・半減期約11年、キセノン133・半減期約5日など)が排気筒から運転中は出ています。それでの被曝は、発電所敷地周辺で0.05mSv・ミリシーベルト。

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 全交流電源喪失(Stasion Blackouto 、SBO)時には、3.30緊急対策を実施していて電源車が接続して原子炉への注水が継続しても、海水での冷却系が稼動しないので約8時間以降にベントをすることになります。東電の運転手順書では、このように核燃料損傷がない場合は格納容器の設計最高使用圧力に至る前に、柏崎刈羽では3.16kg/cm2、約3気圧、になる前にベントするです。

 このベントの際に、どれ位の放射能が水蒸気と共に出るのでしょうか?
核燃料損傷をしていない段階でのベントで、どれ位の放射能が出てくるでしょう?

7月13日に原子力安全委員会が公表した全交流電源喪失・SBOの検討をみると、柏崎-1~5(110万kW)のBWR-5ではSOB後8時間で、サプレッションブール・圧力抑制室の4000トンの水が104℃です。3気圧の沸点は137℃です。大気圧の環境と直結するベントで、この間の崩壊熱を放射能混じりの約230トンの水蒸気で放出するわけです。

 4000トンの水で放射能濃度は薄まり落ちます。仮に10%位に薄まったとしても冷却水で23トン分、1年365日で出す量の八分の一をベントで一気に放出します。海水での冷却系が稼動しない限り、断続的に放出が続きます。放射性希ガスは体に吸収されませんが、放射性ヨウ素131は甲状腺に蓄積されます。子供や妊婦さんが吸わないように避難が必要です。


岩崎 智彦(東北大学大学院工学研究科教授)
内閣府、食品安全委員会、放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ(第2回)議事録より

原子炉の中では、元素と称しますが、要するに原子核ですね。我々は核種と言っておりますが、その核種には大きく分けて 2系統ございます。アクチノイドというものと、核分裂生成物というものでございます。

アクチノイドというのは、ウランを起点にしてできてくる元素でございます。ウランが原子炉に入っておりますと、そこで中性子を吸収してでき上がってくる元素をアクチノイドと分類しております。したがいまして、アクチノイドというのはウランよりも重たい原子核になります。中性子をどんどん吸収してできてくる原子核なので、ウランよりも重たい原子になります。ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムとあります。

一方、皆さん方が核分裂ということでイメージされるのは、ウランの原子核が 2つに分かれてでき上がってくるもの、これを核分裂生成物(PF)と言っております。したがいまして核分裂生成物は、大きく分けてウランを半分に割ったような、半分ぐらいの原子量のもの、半分くらいの大きさの原子核ができてまいります。

「半分くらい」と称しますのは、実はちょうど半分というわけではございませんで、半分くらいに分布するような感じで、ウランの中性子を吸収した後の原子核的な状況によって、ここにあります 20種類ぐらいの原子核に分布して半分に分かれます。

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したがいまして、ウランを入れた原子炉の中ででき上がるものはアクチノイドと核分裂生成物、アクチノイドは大体ここにあります 5種類くらい、核分裂生成物は、この表にありますように 20から 30ぐらいの元素でございます。したがいまして、潜在的には、これが全部出てくれば、この表のとおりに環境中に放出されることになります。

アクチノイドの中では、やはりプルトニウムが一番多くできます。10の15乗ぐらいの放射能で出てまいります。一方、核分裂生成物ですと、10の15乗の放射能で出てくるものが 10種類ぐらいあります。ここでは説明を避けますが、いろいろなものができ上がっていることを御覧いただきたいと思います。

次の論点になりますが、このでき上がった放射能の物質が環境中に出てくるかどうかということになります。

水に溶け込む度合いというのは、実はアクチノイドと核分裂生成物では異なります。

アクチノイドというのは基本的に、ウランと同様に水に溶け込まない性質が 1点ありますし、もう一つ大きな論点は、アクチノイド、いわゆるウランをもとにするのは酸化物として原子炉の中に存在するということが特徴になります。対「水」として考えたときに、酸化物というのは非常に水に溶けにくい性質を持ちますので、極端な言葉を使いますと、お茶碗は Si02(二酸化ケイ素)という酸化物でできていますが、お茶碗の中に水を入れたらその中の Si02が溶けて出るかというと、出てきませんよね。それと同じように、 UO2とかプルトニウムO2とかいう酸化物でおりますので、ウランやプルトニウムのいわゆるアクチノイド系列は、水にさらされても溶けて出てこない、そういう特徴があります。

一方、核分裂生成物ですが、これは元素そのままで存在します。ウランが割れた状態で、元素がそのままで核燃料中に存在しますので、その元素の性質そのもので出てまいります。その性質で最も大きく影響を受けるのが、 融点と沸点という非常に基本的な性質でございます。

核分裂生成物はウランが割れて 2つになる。その 2つのものがそのまま核燃料中に存在する。そうすると、それが元素の性質で水に移行するかどうかということになるわけですが、大部分は金属ですので、基本的には、核分裂生成物でも水に直接溶けることはほとんどありません。アクチノイドよりは溶けやすいですが。

 「表 3」の右欄の 53番に I、ヨウ素がございます。これを見ると、融点が 113 ℃、沸点が 184 ℃。一方、その 1つ飛んで下にセシウムがあります。これは融点が 28℃、沸点が 658 ℃になります。その他の原子核を見ていただくと数百℃の融点でありますし、沸点は数千℃になっているものが大部分でございます。

したがいまして、核分裂生成物の中で出てくる元素はこういう元素ですので、ヨウ素とセシウムを除くと、原子炉に熱が加わった状態で水にさらされたとしても溶けにくいのですが、ヨウ素とセシウムは融点が 100 ℃あるいは 28℃ですから、ヨウ素の場合には、わずかに核燃料が温まっただけで溶けてしまう。融点を通り越しますと、元素の状態ではなくて液体になります。液体になると、水にさらされると水にすぐ移行してしまう。したがいまして、ヨウ素とセシウムという 2つの原子核は非常に水に移行しやすいというのが、この融点と沸点から出てきます。

 「表 1-1」にあります他の元素については、燃料中にはたくさんでき上がるのですが、水には直接移行しないという性質がございます。ヨウ素とセシウムと他の元素で違っている性質というのは、この融点と沸点。水に移行する際に溶けている状態になっているということが非常に性質を変えています。

繰り返しますが、核燃料中にはプルトニウムを代表とするアクチノイドができますが、それは酸化物であるために、水には移りません。一方、核分裂生成物のうちのヨウ素とセシウム以外は、元素の状態ではありますが融点と沸点が非常に低くはないので、たとえ燃料が数百℃になったとしても水に移ることはありません。ところが、ヨウ素とセシウムは燃料が温められて 100 ℃、200 ℃、300 ℃という状態になってしまうと融点を超えてしまって溶けてしまいますので、液体になってしまいます。液体になると、そこに水が流れてくると即、水に移ってしまうという性質があります。

(補遺・・核分裂生成物のなかにはクリプトン85(融点-156.6℃、沸点‐153.4℃)キセノン133(融点-111.9℃、沸点‐108.1℃)など生成時からガス状の放射性希ガスがあります。これらは、希ガスという他の元素と化合物を作りにくい化学的に安定な元素です。また運転中の核燃料の表面は約350℃ですから、ヨウ素もガスです。これらは、核燃料の被覆のピンホールから冷却水中にでています。)

したがいまして、環境中に核燃料から出てくる状況というのは、ヨウ素とセシウムの 2つが非常に重要であります。その他については、個々のケースで化学的に専門の先生にお伺いしないといけません。例えばストロンチウムがどのくらい水に移行するかは化学平衡の計算式を用いないといけないということで、難しい量になるのですが、ヨウ素とセシウムは溶けてしまうので、すぐ出てくるということをお話ししておきたいと思います。

最後の 1点、プルトニウムの論点で非常に重要なことは、核分裂生成物はγ放射体であるのに対して、ウラン、プルトニウムはα放射体でございます。したがいまして、ウラン、プルトニウムが存在するかどうかは測定すると容易に区別できます。ですからα放射線検出器を用いて測りますと、ウラン、プルトニウムが微量であることも他のヨウ素、セシウムとは分離して測定することができますので、プルトニウムのあり、なしは、検出されていないという場合にはほとんどの状況で存在しない、出ていないということと等価だと考えられます。他の、いわゆるバックグラウンドに埋もれてしまうということではなくて、α放射体の場合には非常に測定しやすいということを考えあわせることも重要だと思います。

測定に時間がかかるというのは、α放射体を区別して測ろうとする場合に、サンプルをγ放射体のように、いわゆる検出器を当てて「どのくらい」と見る測定ではなくて、サンプルをとってきまして、それをある程度加工して専門の容器に入れて測定することが必要になりますので、準備に時間がかかりますし、そういう意味で、容易にポッと測れるのではないというのが時間がかかるという意味だと思っています。
シリコン半導体の場合、例えばαを測る場合は周りを真空にしないといけませんので、特殊な手間がかかるということですね。 
 
プルトニウム 
プルトニウムというのは非常に酸素と結合しやすい性質を持っていまして、燃料中にプルトニウムが存在すると、酸素がたくさん酸化物でありますので、プルトニウムはすぐ酸化物になりますので、直接この融点ではなくて、酸化物の融点になります。酸化物は陶器と同じですので、2,000 ℃以上の融点になります。ですから、酸化物になってしまっていれば、原子炉の運転中でもほとんど溶けることはございません。ただ、できた当初、プルトニウムが元素の状態になる環境がゼロであるかどうかはわかりません。

燃料が溶け出します。燃料が溶けて雰囲気にさらされます。そのときに、プルトニウムあるいはウランがその中に出て、それがさらに水に移行して水から出てくる


参考 プルトニウムの融点は639.5℃、沸点は3231℃、酸化プルトニウムは融点2390℃
 ウランは融点1132.3℃、酸化ウランは融点約3000℃
東電福島第一原発の核災害では、炉心の最高温度は約2400℃と解析されている。

東電フクイチ核災害での放出量試算 平成23年6月段階
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