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4000億円、費やして大量の放射性廃棄物を作るな 小柴さん(ノーベル賞・物理)が陳情 2003年4月紙版再録 [使用済核燃料、再処理、廃棄]

紙版、2003年4月21日再録

4000億円、費やして大量の放射性廃棄物を作るな 小柴さん(ノーベル賞・物理)が陳情
 
東京大学名誉教授の小柴昌俊さんと言えば、2002年、ノーベル物理学賞を受けた人ですが、03年3月に文部科学省などに核融合実験炉(ITER・イーター)の見直しを他の物理学者と連名で求めました。その理由は、核融合炉の運転によって多量の放射性廃棄物が出ることなどです。
 ITER・イーターは政府が青森県六ケ所村に誘致している国際熱核融合実験炉です。あまりにお金がかかるので、国際協力で造ろうとレーガン、ゴルバチョフ米ソ首脳が合意したのが1985年。計画段階の見積もりは建設だけで5000億円、誘致国の負担は4000億円。運転費用は別途負担ですから、実際はいくら掛かるやら。
 核融合は太陽の中で起きている反応です。水素原子4個が融合してヘリウムが1個できます。重さ(質量)では、水素4個で4.032、ヘリウム原子は4.002ですから差し引き極僅かですが質量(重さ)がなくなります。これが粒子やエネルギーになります。水素1グラムの核融合によって、競泳用のプール2個分の温度0度の水を一瞬にして沸騰させることができるエネルギーが出ます。小柴さんのノーベル賞は、太陽で起きている核融合で発生するニュートリノという粒子の観測で得たものです。様々な放射線も出ます。
 地球は太陽からはるかの離れています。光でも約8分かかります。地球を覆っている大気は吸収します。こうしたことから、太陽で発生した放射線はほとんど影響しません。しかし、地上に作る太陽、核融合炉ではそうは行きません。
 小柴さんの心配は、「(核融合で光の速さの)高速中性子が大量に出る。これら高速中性子は・・容器の壁を直撃する。この際、起こる壁の放射線損傷は、われわれの経験したことのない強烈なものになることは疑いない。・・かつて、関係者に、壁の放射線損傷をどうするのか尋ねたことがある、すると、六カ月で取り換えられるように壁も設計されているという返事が返ってきた。それなら、これによる稼働率の大幅な低下、コスト上昇はどうするのか、それより何よりそんなに大量に出る放射性廃棄物をどう処理するのか問いただしたが、ついに納得のいく返事を得られなかった。」
 これに対して、イーター誘致派の京大教授の香山晃(核融合工学)さんは「容器の内側に設けられ、容器の千倍以上もの量の高速中性子を浴びることになる「ブランケット第一壁」という構造物ですら二十年以上の使用に耐える」「小柴氏は、・・十分に議論され、過去五年以上にわたって多様な情報形態において明確に否定されてきた事実を「致命的ともいえる欠陥」と述べる。」と反論しています。
 虹屋は素人ですので、どちらの言い分が正しいかは分かりませんが「二十年以上の使用に耐える」という点にひっかかります。実際に使ってみて大丈夫というのではありません。1980年代後半に行われた実験結果を基にした机上の計算での判断です。今、柏崎原発が全て停止しています。その原因の一つが、重要部品のひび割れです。この部品の材料も、実験結果などをもとに廃炉まで約30年は大丈夫と専門家が机上の計算から太鼓判を押したものです。それでもひびが入ってしまった。
 核分裂を利用する原子炉・原発と核融合炉では、部品が浴びる放射線の種類、量は違いますが、放射線照射で材質が劣化する点は同じです。原子炉は実用化され運転経験があります。実際に起きた材料劣化のデータが豊富にあります。それにもかかわらず、専門家の事前の計算と違い、実際にはひびが入ったのです。運転経験が無い核融合炉で「二十年以上の使用に耐える」というのは眉唾ではないでしょうか。
 まだ作られていない核融合炉でも、放射性廃棄物、放射能を帯びたゴミが問題になるわけですが、今現在、原発から出ている放射性廃棄物はどうなのでしょうか。
 原発から出る放射性廃棄物で、もっとも問題なのは使用済み核燃料です。核分裂をさせてエネルギーを取り出し、ウランがプルトニウムなどに変わっている核燃料です。使用済み核燃料の持って行き場所がないのです。このため、燃料の詰め替えができず、数年先には停止する原発が出てくると見られています。
 柏崎市は、新たに柏崎原発に貯蔵されている使用済み核燃料に課税しようとしています。電力会社側は「好きなだけの期間、量の使用済み核燃料を原発構内に貯蔵できる電力会社の自由と引き換えなら、課税もやむなし」と取引を持ちかけてきています。
 地球温暖化対策には二酸化炭素を出さない原発の増設と政府は言っていますが、増設した原発から出る使用済み核燃料はどこへ持っていくのでしょうか?既存の原発の分さえ無いのに、
 また、どれくらいの期間、原子力が使えるかも疑問です。石油は確認埋蔵量、現在の価格水準で採掘できる量を年間消費量で割ると40から50年分と言われています。原発で使うウランは70年から80年です。これは今現在の消費量を基にしていますから、政府の言うように原発を増設したら少なくなります。消費量が2倍になれば、35年から40年です。政府の計画通りにすると石油とウランがほぼ同じ頃に無くなる??
 原発で1000年くらいのエネルギーが賄えるというのは、プルトニウムを使い同時にプルトニウムを作る、使う量以上作るタイプの原子炉ができた場合の話です。このタイプの原子炉を開発しているのは、今や日本だけですが、その原型炉の「もんじゅ」は95年に事故を起こし止ったままです。この1月には高裁で国が出した「もんじゅ」の建設・設置の許可は、安全審査に誤りがあり無効との判決が出ました。
 米国は、世界で始めてこのタイプの原子炉を作りましたが商業炉として採算が採れる見込みがなく、なによりも核拡散を促進する懸念から1994年に中止してます。英国は1988年に、「すくなくとも2020年から2030年までは必要ないため・・中止する」として、撤退しています。フランスは散々事故がおきて96年に、事故がおきないような「炉の工業的発展は2050年より先に持ち越される」として98年に撤退しています。このようにプルトニウムを使う原子炉は、できるとしてもかなり先のことです。
 プルトニウムが現在、最も使われているのは爆弾、原爆や水爆です。そして核軍縮によって、米国、ロシアの核弾頭が廃棄解体されプルトニウムが取り出されています。横流し、盗難などによる拡散が、特にロシアでのそれが懸念され、日本も管理の経費を拠出しています。
 日本の原発は、使用済み核燃料を、そこからプルトニウムを取り出し、使えない廃棄物をより分ける再処理を行うことが前提に運転しています。使用済み核燃料を、その再処理施設ができる青森に運び込む事を地元と約束しています。しかし青森六ヶ所村にまだ出来ていない、それで発電所から出て行かず溜まっているのです。遅れは技術的経済的な困難が理由と言われていますが、深層にはこれ以上プルトニウムを取り出しても爆弾以外使い道が無い、プルサーマルなどに使うにしても核爆弾などから取り出されたもので賄えるし、核拡散予防の点から使う必要があるといった事情があります。
 再処理をしても、やらなくても使用済み核燃料など高いレベルの放射能を帯びた廃棄物は残ります。日本が力を入れなければならないのは、こうした高レベル放射性廃棄物を安全に処分する技術の開発ではないでしょうか。
 チェルノブイリ事故から17回目の春です。  
紙版、2003年4月21日再録


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ずくなしの冷や水

こんにちは
ずくなしの冷や水というブログの管理人のずくなしです。
ウラン232の説明を拝見し、記事の一部を引用させていただきました。
専門的な事項についての説明が大変勉強になります。ありがとうございます。
by ずくなしの冷や水 (2014-07-09 13:58) 

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