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日本はジュネーブ諸条約の求める水準に達していない? 原発とミサイル④ [核のガバナンス]

少々脱線

紛争当事国がジュネーブ諸条約、追加議定書に違反した取り扱いをした場合
(ジュネーブ諸条約の日本語訳は、防衛省による http://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/ )
第一条約の
第49条
「締約国は、次条に定義するこの条約に対する重大な違反行為の一(一つ)を行い、又は行うことを命じた者に対する有効な刑罰を定めるため必要な立法を行うことを約束する。」
「②  各締約国は、前記の重大な違反行為を行い、又は行うことを命じた疑のある者を捜査する義務を負うものとし、また、その者の国籍のいかんを問わず、自国の裁判所に対して公訴を提起しなければならない。各締約国は、また、希望する場合には、自国の法令の規定に従って、その者を他の関係締約国の裁判のため引き渡すことができる。但し、前記の関係締約国が事件について一応充分な証拠を示した場合に限る。」
「③  各締約国は、この条約の規定に違反する行為で次条に定義する重大な違反行為以外のものを防止するため必要な措置を執らなければならない 」
第五十条
前条にいう重大な違反行為とは、この条約が保護する人又は物に対して行われる次の行為、すなわち、殺人、拷問若しくは非人道的待遇(生物学的実験を含む。)、身体若しくは健康に対して故意に重い苦痛を与え、若しくは重大な傷害を加えること又は軍事七の必要によって正当化されない不法且つし意的な財産の広はんな破壊若しくは徴発を行うことをいう。

第一追加議定書
第八十五条 この議定書に対する違反行為の防止・・重大な違反行為の規定が、条文を挙げて記されている


つまり、ジュネーブ諸条約は、締約国に対し①捕虜や住民を殺したり、拷問若しくは非人道的扱い・待遇(生物学的実験を含む。)など「重大な違反行為」をおこなった者や命じた者に対する処罰のための国内法を整備する義務、②違反した個人をその国の国内裁判所に訴追し、処罰する義務③「重大な違反行為」以外の違反する行為を防止するため必要な措置をとる義務を負わせている。したがって国際人道法の法体制は、国際裁判所での処罰が想定された制度ではなく、条約に違反した個人を締約国の国内法、裁判所で訴追し処罰すること原則としている。締結国はその国の武力、武力組織をジュネーブ諸条約、追加議定書を厳守するように、国内法で統制することが求められている。

日本の国内法整備

日本はジュネーブ諸条約、第一及び第二追加議定書を批准・加入している。外務省によれば「両追加議定書を締結するためには、必要な国内実施のための措置をとることが必要でしたが、国際人道法の的確な実施を確保した事態対処法制の整備を通じて、当該措置をとることが可能となり、2005年、我が国は両追加議定書を締結しました。」
事態対処法制とは「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」、平成27年9月に成立した平和安全法制整備法により、「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」と改称と自衛隊法の改正など。
国際人道法の的確な実施のための国内法は整備されているか。調べてみると、3本見つかった。

武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律
平成十六年六月十八日法律第百十七号、最終改正年月日:平成一八年一二月二二日法律第一一八号

国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律
平成十六年六月十八日法律第百十五号

武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律
(平成十六年六月十八日法律第百十六号)
最終改正年月日:平成一八年一二月二二日法律第一一八号

海上輸送の規制に関する法律は、「武力攻撃事態に際して、我が国領海又は我が国周辺の公海における外国軍用品等の海上輸送を規制するため、自衛隊法(により出動を命ぜられた海上自衛隊の部隊が実施する停船検査及び回航措置の手続並びに防衛省に設置する外国軍用品審判所における審判の手続等」を定めたもの。

国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律で罪としているのは4つで、刑法第4条 (公務員の国外犯)を適用するとあり、日本国外での日本の公務員による武力行使も視野に入っている。4つは①重要な文化財を破壊する罪②捕虜の送還を遅延させる罪③占領した地域に入植させる目的で占領地域に移送する罪④文民の出国等を妨げる罪の4つ。第一及び第二追加議定書で挙げている重大な違反行為の種類や数に比べあまりに少ない。例えば、文民たる住民又は個々の文民を攻撃の対象とすることや、無防備地区及び非武装地帯を攻撃の対象とすることや、戦闘外にある者であることを知りながら、その者を攻撃の対象とすることは国際人道法の重大な違反行為として挙げら「重大な違反行為は、戦争犯罪と」認められているが、これを裁く法に日本の法律「国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律」はなっていない。

武器の使用に関係する条文は、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律に第六章 補則第一節に第百五十二条 武器の使用とある。「出動自衛官は、・・拘束、抑留、収容などをする場合においては、その事態に応じ、合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。」危害を与えても違法、犯罪にならない場合は「出動自衛官に抵抗する場合において、これを防ぐために他に手段がないと当該出動自衛官において信ずるに足りる相当の理由があるとき。」
このように、攻撃対象を制限していない。議定書、諸条約では地域や人、財物に”保護”、武力行使の対象にしてはならないとする条文が数多くあるが、「重要な文化財」以外はほとんどない。


命令で無防備地区及び非武装地帯の住民や戦闘外にあると知れる者を拘束、抑留、収容などの任務で出動した自衛官は、住民らからの抗議、抵抗を受けるだろう。この事態では、出動自衛官と命令を下した自衛隊指揮官が2重の戦争犯罪を犯している。一つは無防備地区及び非武装地帯で、一つは住民や戦闘外にあると知れる者を拘束、抑留、収容など”攻撃”をしたことである。抗議、抵抗を受け武器を使用し負傷者が出た場合は、自衛隊指揮官や命令系統の責任者は一切の責任を問われることはない。当該出動自衛官の個人に押し付けている。


このように日本は、ジュネーブ諸条約が締約国に対し求ているその国の武力、武力組織をジュネーブ諸条約、追加議定書を厳守するように、国内法で統制する水準に達していない。

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