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1号機のSOP対応 東京電力の第三者検証委員会の報告書解読(22) [東電核災害検証、吉田調書]

東京電力の「福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告に関する第三者検証委員会」の検証報告書の解読(22)

ペデスタル初期注水
さて、3.11の1号機では、炉への冷却水の注水が行えず冷却が確保できない。SOPでは、「損傷炉心の冷却が確保されない場合」には「注水-3a PRV破損前のペデスタル初期注水」が実施する、実施すべき対応策である。18時半頃からペデスタル初期注水が行われたとすると、事故の展開はどうなるだろうか。

  ペデスタル初期注水40㎥は流量70㎥/時を目途に行うから、約40分で注水完了する。19時15分頃には終える。原子炉の炉圧下げるための操作、SRV主蒸気逃し安全弁を開けるための操作は特に記録されていない。SRVは専ら安全機能、圧力容器最高使用炉圧9MPa付近で開閉していたのだろう。11日20時07分には原子炉圧力7.0MPaが計測されている。初期注水を終えメルトスルーしてなければ、炉注水か格納容器除熱だが、原子炉への注水は炉圧が高いからできない。

TIP140806j0110-09b.jpg 1号機のSRVの一部は、安全機能ではD/Wに放出する仕様である。また、発電所の対策本部の技術班の「TAF有効燃料頂部まで水位低下は18時15分」との予測では、約1時間半後の19時半頃にBAF有効燃料底部になる。核燃料溶融が本格化し炉内核計装系の移動出力計装管TIPが熔けて原子炉内からの水蒸気、放射能がTIP管を通ってTIP室へ漏れ出す。後日の調査で建屋1 階南東のTIP室周辺で高線量汚染が確認されている。TIP管が通るD/Wで、継手からのリークが疑われる。東電はそのように仮定している。

格納容器除熱
 格納容器除熱は格納容器の圧力が0.64MPaを超えた場合に行うと手順書にある。しかしディーゼル駆動消火ポンプD/D-FPの能力、0~0.69MPaで使えるを考えると、もう少し低い格納容器圧力で始めた方が良い。 0.1MPa(1気圧)の余裕を設けて0.59MPaとすると、23時50分に0.6MPaを計測している。これは津波来襲後の初めての計測で、もっと早い時刻に0.6MPaを超えたと思われる。東京電力の解析では21時半頃に超える。

 それで、21時半からS/CかD/Wへのスプレイ散水による格納容器除熱を行う。注入流量70㎥/時を目途にスプレイする。この21時半頃の崩壊熱は時間当り20㎥の水を水蒸気に変える量だから、それ以上の水量をスプレイ散水すれば高圧をもたらす水蒸気を熱水に戻せる勘定だ。20分位散水して格納容器の圧力が0.392MPaを下回ったら停止。東電の解析では約30分で0.2MPa上昇するペースである。再び格納容器圧力が0.59MPaを超えたらスプレイ散水再開。炉圧が下がるのは無論だが、格納容器内に出た放射性ヨウ素などの放射能が熱水中に封じ込められる。

 ディーゼル駆動消火ポンプD/D-FPは20時50分に再起動してアイドリング状態で待機、12日の01時25分には燃料切れで停止。だから、24時頃まで、D/D-FPで散水、停止し格納容器圧力上昇、再散水を繰り返すことだろう。その後は、消防車のポンプとなる。

NHK201503a.jpgメルトスルー、メルトアウト
 この間、原子炉の炉圧を下げる操作、SRV主蒸気逃し安全弁を開ける事はしていない。20時07分の原子炉圧力7.0MPaを最後に11日の計測は途絶え、次は日が変わって12日の02時45分に0.9MPaが計測されている。急速に炉圧が下がる要因は、メルトスルーにより圧力容器破損である。それもHPME( high pressure melt ejection ,ejection は放出、噴出)「高圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床などに溶融炉心が飛散」のパターンのメルトスルーだ。ペデスタル床の外縁まで飛散したデブリは格納容器を破っている、メルトアウトしたと考えられている。

 今検討中のSOP(ペデスタル初期注水)シナリオでは、水深約60cmの溜まり水に飛散する。水蒸気爆発を起こさなければ、デブリは溜まり水、初期注水されたペデスタル床上の水で除熱される。メルトアウトすることはない。ペデスタル床のコンクリートと反応、MCCIも起こさない。大量の水素ガス、一酸化炭素ガスは生成しない。デブリまみれのコンクリート微粒子もできない。

 水素ガスは、水には溶けず温度が低下しても凝縮しないガスだから、水—ジルカロイ反応でできるガスの蓄積で炉圧は徐々に上がる。MCCIあり且つ水蒸気の凝縮なしの1号機で計測された格納容器圧力は「12日2時30分頃に0.84MPa[abs]を計測した後、格納容器のベントに成功するまでの間(12日14時半頃)、0.7MPa[abs]~0.8MPa[abs]程度の圧力を維持」している。MCCIなし且つ水蒸気の凝縮ありのSOPシナリオでは、消防車ポンプの吐水(注水)限界の0.69MPaには達せず、格納容器へのスプレイ散水は継続するだろう。格納容器の健全性は維持される。

格納容器ベント
注水総量1700㎥を限界とするなら、約84時間・3日半に注水制限に触れる。3月15日未明に格納容器ベントとなる。その前にベントガス、ブルームの流れ先を考えて、例えば海の方向に流れる海風の時を選んでベントも可能だろう。
 ベントされるガスは水蒸気、水素ガス、放射能が含まれるが、放射性ヨウ素はスプレイ散水に大半は溶解しているだろうし、その他の放射能も散水で叩き落されペデスタル床上の溜まり水、S/Cのプール水に蓄えられているだろう。東京電力は「解析によると、炉心が損傷することにより放出されるFP については、3月16日12時の時点で、希ガスは、仮定した格納容器からの気相漏えいおよびベント操作により約100%が環境中へ放出されることとなる。ヨウ化セシウムおよび水酸化セシウムについては約6%の放出であり、その他の核種は概ね5%以下の放出という解析結果となっている。」SOPシナリオでは、希ガスは変らず100%、ヨウ化セシウムおよび水酸化セシウムその他の核種は概ね1%以下になるだろう。

 このように、事前に練り上げられた対策、SOPやEOP(兆候ベース)に従った沿った対応を東京電力は1号機で採らなかった。2、3号機での展開は?
 


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