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KK原発の原子力防災/放射線感受性での池田香代子妄言 [柏崎刈羽原発の防災計画]

東京電力の柏崎刈羽原発(㏍原発)、事故時の住民避難計画を評価してきた。
そして検討するために、新潟県と東電が昨年2015年12月16日付で公表した放射性物質の拡散シミュレーションの結果、影響評価を利用することにした。その際、あとで、検討するとした「よう素による甲状腺等価線量」と「避難の優先順位付け」とした。今回は優先順位付けについて。その2回目。
 放射線への感受性は、差があるのだから、同じようにブルームで被曝するにしても感受性の高い人は強い悪影響、健康への悪影響を受ける。それは、年齢的には18歳以下の特に乳幼児・学童期、性別では女性である。しかし、「放射線の影響がより深刻だとされていた子どものほうが、むしろ被曝をはねかえす力をもっている」「修復能力も子どものほうが上なのだそうです。」と池田香代子は云う。
今回は、これを検討する。
DNA損傷は細胞分裂の際に修復される
細胞分裂は染色体を顕微鏡で観察できるいわゆる有糸分裂期間、分裂期(M期)。
jrosg001-16上小.jpgその終了時点からG1期(gap1・ジーワン期)、DNA合成期(S期・エス期)、G2期(gap2・ジーツウ期)と巡り、再び分裂期(M期)に至る周期になっている。これを細胞周期(さいぼうしゅうき; cell cycle)
比較的低線量の放射線(電離放射線)で照射すると細胞周期が停止または遅延し細胞分裂の開始が正常より遅れてしまう。遅延の度合いは照射線量に依存して直線的な比例増加する。さらに線量が増加すると分裂期(M期)に到達しない内に死を起こす(間期死、間期アポトーシス)細胞が多くなる。照射線量がさらに増加すると最終的にすべての細胞で分裂は起こらなくなる。細胞集団の増殖率は低下してゼロとなった後、細胞致死率が増殖率を上回ると細胞集団は衰退して消滅する。
 この被曝による細胞自死(アポトーシス)は細胞周期の期別で違う。一般的に分裂期(M期)またはその付近で最もアポトーシスが起こり易い(放射線に感受性が高い)。次のG1期は、はっきりした長さを持つ細胞では、そのG1早期にアポトーシスが起こり難くい(抵抗性がある)時期があり、G1期の終わりに向って起こり易さが増える(感受性になる)。
 DNA合成の開始とともに細胞は放射線(電離放射線)に感受性が低くなる=耐性となって行く。DNA合成期(S 期)末期で最も抵抗性である。G2期は比較的感受性を示すことが多い。
 この放射線(電離放射線)被曝でのG1早期とDNA合成期(S 期)末期の2つの耐性ピークとその間の感受性の差は少なくとも数倍の違いがみられる。
X線(電離放射線)と紫外線(非電離放射線)では互いに鏡像関係にある。
 細胞周期の遅延は、細胞が細胞周期の次の時期へ移行する前にDNA損傷などがないかどうかチェック確認し、修復の機会を作るからだと考えられている。これを細胞周期チェックポイントという。DNA損傷チェックポイントは、G1期、G1/S期、S期、G2/M期にあり、正常なDNA合成を監視している。
静止期(G0期、ジーゼロ期)
この細胞分裂の遅延に似た現象に、細胞周期から解脱した静止期(G0期、ジーゼロ期)がある。細胞増殖能力は保ちつつも細胞分裂を停止している状態である。分裂の準備も行われていないG1期が延長しているととも、細胞周期から分かれた活動停止とも云える。テロメアという染色体末端にあるDNA構造がある。テロメアの長さは細胞分裂可能回数を制限するため、細胞寿命の決定因子の一つとして注目されている。研究ではテロメアの長さがある程度になると静止期(G0期)に入るとの結果が出ている。
 がん細胞では静止期(G0期)にとどまることはせず無制限に増殖を続ける。このためがん組織が膨らみ続けひずみが生じ、組織が破損してしまうため激しい痛み(疼痛)を生じる。がん細胞と正常細胞の違いはG0期にとどまる能力があるかないかとも考えることができる。
 完全に細胞分化した細胞のほとんどは静止期G0期に入る。神経細胞は特に無制限にG0期にとどまる。
 そして、G0期は一般に放射線感受性が低い=被曝耐性が高い。細胞分化した細胞から成る成体は(電離)放射線被曝に耐性が高いと考えられる。
Bergonie-Tribondeau(ベルゴニー・トリボンドゥ)の法則 
一般に、ヒトを含む哺乳動物の放射線感受性は、「Bergonie-Tribondeau(ベルゴニー・トリボンドゥ)の法則」が当て嵌まるとされている。その法則は生体組織は、①その組織の再生能力(将来行う細胞分裂の数の多い)が大きいほど、②細胞分裂の期間(細胞分裂の頻度の高いもの)が長いほど、③形態的および機能的に未分化であるほど、放射線感受性は高い=電離放射線の被曝耐性が低い。

 この法則はラットの睾丸の放射線効果の研究から導かれたが、一般的な傾向をよく表わしていると考えられている。すなわち若い個体では細胞分裂や物質代謝が盛んであるので、放射線の感受性は高い。反対に高齢者は感受性が低いと考えられている。
動物実験・・年齢が高いほど感受性が高くなるか?
 放射線医学総合研究所の生理病理研究部での研究(平成6年度)で、放射線晩発影響に関する感受性の年齢依存性が調べられた。(http://www.nirs.go.jp/report/nenj/H6/index.php?nenj-09.htm
この研究は、「発癌に関する感受性は年齢が高くなるにつれて高くなるという説があるのでこれを検証」する目的で、雌マウスが用いて行われた。1 年齢(365日齢)の照射と新生児期(0日齢)の照射の効果を比較した。雌マウスの平均寿命は780~760日。1歳のマウスはヒトでは30歳くらい、2歳は60歳くらいに相当する。セシウムCs137のガンマ線を、線量は1.9Gy、3.8Gy、5.7Gyの3レベルで全身照射した。
 結果は明白で新生児期照射の晩発影響は1年齢照射の場合よりもはるかに大きい。「例えば線量3.8Gyにおける年齢別死亡率についての累積相対リスクCRRは1年齢照射群においては1.50であるのに対し新生児期照射群では7.01である。」「腫瘍発生率を比較すると、肝腫瘍、下垂体腫瘍、肺腫瘍、卵巣腫瘍ならびに骨腫瘍の誘発に関しては新生児期の方がはるかに感受性が高く、ハーデリアン腺腫瘍のみは1年齢照射群の方が発生率が高かった。」ハーデリアン腺(動物の内眼角に存在する外分泌腺 )
 
累積相対リスク CRR; cumulative relative risk
相対リスク.jpg
また「照射時年齢による年齢別死亡率に関する累積相対リスクの経時的変化」の研究では、「胎生17日齢、出生後0、7、35、105、240ならびに365日齢」の雌マウスにガンマ線を、「線量は1.9,3.8ならびに5.7Gy」照射ている。結果は「いかなる時期の照射によっても累積相対リスクは年齢が高くなるにつれて減少して行く。」そして「減少の程度は照射時年齢により異なり、若い成体期(8~10週齢)以前の照射の場合には減少の程度が大きく、中年成体期の照射したグループにおいては減少の程度が小さい。」
このように細胞分裂など細胞生理面とより高次な個体レベルの動物試験結果から、「若い人ほど放射線の感受性は高い。反対に高齢者は感受性が低い」となる。池田香代子氏の「放射線の影響がより深刻だとされていた子どものほうが、むしろ被曝をはねかえす力をもっている」「修復能力も子どものほうが上なのだそうです。」は、妄言である。

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