劣化ウラン、十数万t(ウラン量)はシベリアへ 高レベル廃棄物はシベリア送り?(中) [廃炉]
Megatons to Megawatts project
「メガトン(核兵器)をメガワット(電力)へ」
1991年9月、ソ連の崩壊が予見されると、米国は直ちに核兵器の安全な貯蔵・移転・解体を呼びかけ、同年12月、モスクワで政府間協議を始めた。第二次戦略兵器削減条約(START-II、1993年1月調印)に先立ち、1992年8月にはロシアの核兵器解体で回収される高濃縮ウラン(HEU:high enriched uranium、U-235が20%以上が米国定義)について合意ができ、93年2月、米国とロシアの間で「核兵器解体に伴う高濃縮ウランの処分に関する米国およびロシアの政府間合意」(高濃縮ウラン合意)が締結された。
ロシアの武器や原子力潜水艦用燃料などの軍用備蓄量の高濃縮ウラン(推定720±120トン、U-235が約93%以上)のうちウラン500トン(約2万の爆弾に相当)を米国の商業用発電原子炉用に濃縮度4.4%に薄め(ダウンブレンド:downblend)希釈した低濃縮ウラン(LEU:Low Enriched Uranium )約15000トンを製造しする( the blended down LEU )。それを米国に売り渡す。最大30トン/年の割合で、2013年まで継続する。これで、米国の電力の約10%ができると見込まれた。「メガトン(核兵器)をメガワット(電力)へ」。
米国側窓口はUSEC(米国濃縮公社)が、ロシア側はTENEX(テクスナブエクスポルト)。当初、低濃縮ウラン1kg当たり$780と設定されたが、何度か契約細部や価格の変更があり、ロシア側TENEXの総収入は170億ドル。
微濃縮(1.5%程度)ウランで薄める
先ず核弾頭から高濃縮ウランHEMを取り出します。その金属ウランをフッ素化合物の六フッ化(弗化)ウランUF₆にします。得られた高濃縮UF₆(U235が93%以上)を微濃縮UF₆とガス流中で混合しU235の濃縮度4.4%の低濃縮ウランLEUにして出荷シリンダーに詰めます。その出荷シリンダーでUSEC(米国濃縮公社)に渡し、USECは米国工場で顧客の注文濃度に調整して出荷します。
その希釈用の微濃縮ウランは、劣化ウラン(れっかウラン Depleted Uranium、略称:DU、日本工業規格では廃品ウラン・テイルウラン)から製造されました。
天然ウランはU‐235の含有率が0.720%です。含有率を高める濃縮を行いますが、含有率が少なくなった副産物がでます。その0.720%以下のウランです。天然ウランにはU-234が約0.0054%含まれています。含有率は極小ですが、放射能強度は強い、含有率99.28%のU-238と同じです。濃縮で高まります。
核弾頭から取り出された高濃縮ウランHEMは、高濃縮だからU-234の濃度も高く、天然ウランを原料とした微濃縮ウランを希釈に用いた場合、米国のU-234の濃度制限値を超えてしまう。
このため、U-234の濃度が低くなった劣化ウランを再濃縮。それで生成する、さらにU-234の濃度が低くなった劣化ウランを原料として1.5%程度まで濃縮した微濃縮ウランをつくる。それを用いて高濃縮ウランを希釈しています。ロシアは、0.3%~0.35%の劣化ウランを天然ウラン相当の濃度(0.711%)まで濃縮して生成した、濃度0.2%~0.25%の劣化ウランを1.5%前後まで濃縮していると見られています。
貴方の劣化ウランを使いましょうか?
つまりロシアの500トンのHEUに、145000トンの微濃縮(1.5%程度)ウランを混合して、米国の商業用発電原子炉用の低濃縮(4.4%)ウランをつくります。そのためには濃度0.3%~0.35%の劣化ウラン約数万トン位を、微濃縮(1.5%程度)ウラン製造に使うということです。それで、数十万トンの劣化(濃度0.3%~0.35%)ウランの保管に頭を悩ましていたフランスのAREVAや英国、ドイツ、オランダの国際共同企業体URENCOに持ちかけました。
UF6は酸素、窒素、二酸化炭素とは反応しないが水と過激に反応。大気中の水分とも反応してフッ化水素(HF)とふっ化ウラニル(UO2F2)を生成。フッ化水素(HF)は、医薬用外毒物で水溶液は弗酸。多くの金属も腐食し、ガラスも熔かす。触れると透過性が高く、他の酸に比べて身体の組織の深部まで浸透する。激しく体を腐食する。呼吸で吸い込んだら?
TENEXは、1996年からURENCO及びAREVAの劣化(濃度0.3%~0.35%)ウランを天然ウラン相当の濃度等まで再濃縮する、再濃縮して発生した濃度0.2%~0.25%の劣化ウランはロシアの所有にするという濃縮役務契約を結びました。
ロシアは希釈用微濃縮ウランの原料を手に入れ、余剰濃縮設備を稼動させ外貨を獲得できる一石二鳥。フランスなどはお荷物の劣化ウランが天然ウラン相当の原料に変わる一石二鳥の取引です。
戻って再濃縮ウランは約9,000tU(トン・ウラン、ウラン量でのトン数)で、ロシアへ輸送された廃物の劣化ウランは十数万t(ウラン量)と推定されているそうです。差し引きするとウラン量で(十数―1)万トンの劣化ウランが、ロシアの濃縮工場、シベリアの工場に送られたままです。その結果が、下図の野積みのコンテナ、シリンダー。
下図の野積みのシリンダーの中身は劣化ウランDUだけではありません。再処理で出て来た回収(減損)ウランもあります。続く
①30トンのHEU高濃縮ウラン93%濃度に
②0.25%濃度の劣化(廃棄)ウラン8555トンを濃縮(必要濃縮作業534万SWU)して作られた1.5%濃度のLEU低濃縮ウラン・916.6を混ぜる。
③4.4%濃度のLEUが946.6トンできる
これは、 天然ウラン(濃度0.711%)9000トンを原料にして552万SWUの濃縮作業で生産するに匹敵
ロシアの核弾頭からのHEU高濃縮ウラン、U-235の93%濃度の不純物 にはU-234だけでなくU-232、U-236が含まれている。これは、ロシアのHEMの大半は、再処理でプルトニウムを抽出した後の差処理で得られる回収(減損)ウランを原料に濃縮した物でウランの同位体やFPで汚染されているため。
UEIP 濃縮工場(Novouralsk、前Sverdlovsk-44)
ECP濃縮工場(Zelenogorsk、前Krasnoyarsk-45)
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