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検証 3,11でのPBSの予測の実力は? 原子力災害対策指針(2015年4月改定)新潟県vs原子力規制委員会(8)検証 予測手法 [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム・SPEEDIは放出される放射能に関する情報、どういった放射性物質がどれだけ、いつ、放出されるという放出源情報をERSSから受け取る。(入力する。)
 ERSS・緊急時対策支援システムは、4つのサブシステムから成る。その内の解析予測システム・APSとプラント事故挙動データシステム・PBSが放出源情報を受け出し、SPEEDIへの入力データとして使う。APSは原発プラントから伝送されるプラントデータを基に、それらの推移グラフや放射性物質の放出量を予測する。東電核災害では地震で3月11日午後2時47分ごろに国へのデータ伝送が途絶えた。東電・柏崎刈羽原発で中越沖地震(2007年)から続く2度目の途絶。途絶で解析予測システム・APSは事故の進展予測解析には使えない。どのみち、この時途絶しなくてもSBOに15時45分頃なっているから、1時間後16時45分頃には電源を外されて途絶する。 
 緊急時対応センター・ERCのプラント班が原子力安全基盤機構・JNESに緊急時対策支援システム・ERSSによる解析を依頼・指示している。
 参照・・事故進展解析結果について http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110902005/20110902005-6.pdf
 東電核災害3.11にはAPSは「正確なプラント情報を得ることができなかったため、 事故進展予測には利用していません。」。このようなプラント情報を得られない場合に備えて整備されたシステムが、プラント事故挙動データシステム・PBSである。PBS・Plant Behavior Data System はオフライン型なので、伝送が途絶しようが、起動すれば使える。「PBSでは、予め、種々の事故事象に対するプラント挙動を解析し、これら解析結果をデータベース化しておきます。 事故が発生した際は、似かよった事象をデータベースから検索・表示することにより、APSよりも早い 段階で、おおよその事故進展を把握することができます。また放射性物質の放出量をSPEEDIに受け渡すことも可能です。」http://www.nsr.go.jp/archive/jnes/bousai/system/erss-7.htm
3.11ではどう使われたか?
11日14時47分頃 東北大震災、
11日15時46分頃 津波来襲
PBS/1F-2解析結果、11日21時30分頃 緊急時対応センター・ERCのプラント班へ、2号機のPBS解析結果送信
ERSS予測20110902PBS2号機s.jpg
ERSS予測20110902PBS2号機.jpg
PBS/1F-1解析結果、12日01時57分頃 ERCのプラント班へ、1号機のPBS解析結果送信 
ERSS予測20110902PBS1号機.jpg
PBS/1F-3解析結果、13日06時29分頃 ERCのプラント班へ、3号機のPBS解析結果送信 
ERSS予測20110902PBS3号機.jpg

PBS/1F-2解析結果
画面から、PBSは炉心露出、炉心溶融(メルトダウン)、原子炉容器破損(メルトスルー)、格納容器破損(放射能の環境放出)の予測時刻。それも、過圧破損と過温破損の二つの時刻を予測する。その時刻での、炉心からの放射能、希ガスとヨウ素の時間当りの放出量と環境中の量(放出量の累積量)も予測する。最下段には「SPEEDI様式出力」のボタンがあり、予測データをSPEEDIの拡散予測に使えるようになっていることが判る。

 図(グラフ)が1枚が20時30分時点のもの。この図での予測では、RCIC・原子炉隔離時冷却系は約4時間稼働して止まり、原子炉圧力が上昇しっぱなしになる。そして原子炉停止(スクラム)から約8時間後に炉心溶融(メルトダウン)、約11時間半後に原子炉容器破損(メルトスルー)、約23時間半後に格納容器が過温破損し放射能の環境へ大量放出が始まる。約2時間続く。と予測している。

 それから30分後の21時01分のものが画面の図。放射能の放出が炉心から(時間当り)と環境中へ(累積量)で、デジタルな値でわかる。予測条件がSBO。

ベント、22時に言及 これらの他に、あと2回のPBS予測がある。

ERSS・PBS予測20110902005-6-001.jpg 一つは、22時00分に官邸の緊急対策本部への連絡の元になったもの。21時50分の水位の実績値が前提条件として書かれている。文書を作成する時間を考慮すると、21時50分から数分でPBS解析が出たことが判る。「早い段階で、おおよその事故進展を把握する」という目的でPBSは開発されたが、PBSシステムが立ち上げてあれば前提条件を設定し入力すれば約数分でおおよその事故進展の予測を出すことできた。

 原子炉隔離時冷却系・RCICの停止が原子炉停止(スクラム)から約5時間半後の20時30分の実績が書かれている。21時01分予測では約4時間だから、約1時間半も長い。炉内に水の供給がそれだけ長くなり、水面低下が遅くなる。炉心露出が遅くなり、炉心溶融(メルトダウン)も遅くなる。22時連絡ではスクラムから約10時間後と2時間遅くなり、24時50分(12日00時50分)と予測されてる。

 そして、ベントが登場している。11日22時の時点で政府の官邸対策本部では、ベントが俎上に上がっていた。格納容器が損傷する前の、人為的な放射能の放出。PBS解析では、格納容器の圧力はメルトスルーと同時刻に設計最高使用圧力に達する。それから上昇して約11時間後に2倍に達している。破壊実験から、2倍以上では何時、過圧破損がおきてもおかしくない状態である。2倍になってから約1時間後、メルトスルーから約12時間後に過温破損している。過温破損にベントは効果がない事は周知の事実だ。ベントをして過圧破損を防いでも、過温破損は起きる。過圧破損をしても過温破損は起きる。この2種類の格納容器の以前に、人為的な放射能の放出を格納容器が設計最高圧≒メルトスルーに行うとしている。

ERSS・PBS予測20110902005-6-002.jpg 時刻はスクラムから約12時間30分後、27時20分(12日03時20分)に格納容器が設計最高圧と予測されてる。ぞして「ベントにより放射性物質の放出」にいたる。この放射能には避難などの対策を実施しなければならない。拡散を予想し、範囲を経路、避難先を定めなければならない。ただ量はPBSでは直ちに出ない仕様だから、「解析中」 この拡散予想、SPEEDIの予想がどうなったかは公表されていない。
 もう一つが、2時間後の11日24時(12日00時00分)の官邸への連絡。この00時の連絡では、1~3号機の水位を一覧して「現在水位は安定している。」とし、2号機の炉心露出から4時間半後に格納容器が設計最高圧と予測。この4時間半は21時の予測と22時連絡と同じである。
 11日24時(12日00時00分)は津波来襲時刻にSBOになったとすると、設計では非常用蓄電池が8時間分だから23時40分頃に直流電源もなくなるから、いよいよ危険に成って不思議ない時刻である。RCICが止まれば2、3号機の水位が下る。そうして炉心露出するから、それから4時間半後に格納容器が設計最高圧と予測=ベント予定するという内容だ。SPEEDIの拡散予想はどうなった。これも、SPEEDIが使われたのか否かすらも公表されていない。

 避難をどの地域から優先に行うか、どのルートを採ると良いかという判断に役立つ予測だ。これは予防的に行う避難だから、被曝線量の値は概ね正しければ良い。この程度の予測は、厳密な量のデータがいるのだろうか。単位放出での予測で十分ではないか。SPEEDIの6時間予測計算の時間は15~20分だから、炉心露出のタイミングでSPEEDIの拡散予測を始めたら燃料被覆管破損前に予測結果が出てる。これでも遅いのだろうか。
SPEEDIの計算時間.jpg
蛇足
PBSの設定条件が合っていない

 本稿は、ERSSとSPEEDIがどれ位の時間で、時刻的に稼働できたを検討しているので、詳しく検討しないが、1号機、3号機でも解析での設定条件はSBO全交流電源喪失であった。これは東電核災害では津波来襲時に直流電源を全部または一部無くしており、それを入れた条件での解析ではなかった。
 1号機は直流電源を失うとIC非常用復水器の隔離弁が閉じるようになっていた。蒸気駆動の高圧注水系ポンプ(HPCI)も管制の直流電源なく起動ができないので、炉への注水は完全になくなる。崩壊熱で生成する水蒸気が安全弁を押し開いて、炉から出る一方になる。炉の水面は低下一方になる。この直流電源喪失が解析では設定されていない。それでスクラムから13時間余り、核燃料は冷却水の中に沈んでいることに1号機のPBS解析ではなっている。
 全交流電源と直流電源の喪失を解析条件にすると、喪失の直後から炉の水面は低下する。炉心露出は約2時間後になる。1号機のPBS解析の時刻が約11時間早くなると考えられる。スクラムから約4時間後に炉心溶融、約14時間後にメルトスルー、約25時間後に過温で格納容器破損となる。「早い段階で、おおよその事故進展を把握する」というPBSの使用目的は十分に果たされている。

タグ:パブコメ PBS
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