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川内原発パブコメ(7) 水蒸気爆発と原子炉下部キャビティの蓄水 [核のガバナンス・パブコメ]

「Ⅳ-1.2.2 格納容器破損」について

意見の要旨
 ここでは「大破断LOCA+ECCS 注入失敗+格納容器スプレイ注入失敗」と全交流電源喪失・SBOなどが重なった事故を想定している。そして、約19分後に核燃料の溶融が開始し、約90分後に原子炉容器を溶融貫通、メルトスルーするとしている。採られ検討されている初期の対策は、代替格納容器スプレイによる格納容器内の冷却、減圧及び原子炉下部キャビティへの注水である。下部キャビティに約150cm.溜まった冷却水に溶融貫通した核燃料の塊が落下する。
 水蒸気爆発が懸念されるが、九州電力は発生する確率は極めて小さいとしている。その主張は信じがたい。それを了解した規制委員会の見解は更にわからない。再検討、審査を求める。

また、下部キャビティに蓄水しないで落下後に冷却水を注水する場合のリスク、つまり溶融炉心・コンクリート相互作用のリスクと九州電力の下部キャビティに蓄水した場合のリスクを比較検討してほしい。その結果を示して、再度、審査書(案)をだしパブリックコメントを行うことを求める。

意見

九州電力の主張は「実機において想定される溶融物(二酸化ウランとジルコニウムの混合溶融物)を用いた大規模実験として、COTELS、FARO 及びKROTOS を挙げ、これらのうち、KROTOS の一部実験においてのみ水蒸気爆発が発生していることを示すとともに、水蒸気爆発が発生した実験では、外乱を与えて液-液直接接触を生じやすくしていることを示した」(審査書の194、195頁)
 「水蒸気爆発が確認されたケースよりも溶融物が多いFARO実験やCOTELS実験では水蒸気爆発は観察されていない。このことからデブリ粒子を覆う蒸気膜は安定性があり、外部トリガリングなど外的な要因が無ければ、蒸気膜の崩壊は起こりにくいことを示している。
 したがって、実機においては、キャビティ水は準静的であり、KROTOS実験のような外部トリガリングとなり得る要素はなく、実機において大規模な水蒸気爆発に至る可能性は極めて小さいと考えられる。」「水プール底から圧縮ガスを供給し膜沸騰を強制的に不安定化(外部トリガリング)を行った場合に水蒸気爆発が観測されている」(第58回審査会の資料2-2-6「溶融炉心と冷却水の相互作用について」の3.2-10)とある。

実験として良く知られているのは、九州電力の提示したCOTELS 、FARO 及びKROTOSの他にTROI(Test for Real corium Interaction with water) 装置による実験がある。TROI装置による実験では、6回のうち4回は激しい自発的な水蒸気爆発が発生した。溶融物としては、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)のみと二酸化ウランにジルコニアを加えた場合について実験してどちらでも自発的な水蒸気爆発の発生を確認している。

九州電力はKROTOS の一部実験においてのみ水蒸気爆発が発生している、「水蒸気爆発が確認されたケースよりも溶融物が多いFARO実験やCOTELS実験では水蒸気爆発は観察されていない。」としているが、水蒸気爆発をおこしたKROTOS実験例よりTROI実験例は溶融物が多い。また外部トリガリングは行っていない。
 九州電力は、溶融物が多い実験では水蒸気爆発は観察されていないことから「外部トリガリングなど外的な要因が無ければ、蒸気膜の崩壊は起こりにくい」と主張している。しかし、九州電力が無視しているTROI実験例を考慮対象に入れると、九州電力の主張は妥当性がない。
 また地震時には、キャビティ水は動的、揺れ動いくであろう。つまり外部トリガリングを起こしやすい状態である。川内原発は周囲に桜島をはじめ多くの火山があり地震が多い。川内原発という実機では「キャビティ水は準動的であり、KROTOS実験のような外部トリガリングとなり得る要素はある」と置くのが危険性を評価する際には保守的で妥当である。つまり川内原発において大規模な水蒸気爆発に至る可能性は「極めて小さい」とは考えられない。

また東電核災害の経験は、九州電力の主張は原子力事業者でも確実性のある見解になっていないことを示している。
 東電核災害の約一月前に東京電力は、シビアアクシデント事故時手順書の改定を行っている。「電力共同研究にて得られた最新知見(圧力容器内炉心保持(IVR)促進、溶融炉心ーコンクリート相互作用(MCCI)抑制等)を反映したAMG改訂に伴うSOP改訂」である。改訂された手順書には「RPV破損前のペデスタル初期注水」という項目がある。PWRの川内原発の下部キャビティに当たるところをBWRの東電福島第一原発ではペデスタルという。そのペデスタルに原子炉・圧力容器・RPVが破損する前に水を張る手順が「RPV破損前のペデスタル初期注水」である。

格納容器上部・ドライウエルの格納容器スプレイ系で注水する。注水量は格納容器の温度や圧力を下げるための格納容器スプレイ・散水量と同じ。格納容器に高温度や高圧力といった問題が無くても、メルトダウンが始まったら格納容器スプレイでペデスタルに水をためておく。ペデスタルからS/C(圧力抑制プール)への溢水が生じる程度の水深まで水を張る。九州電力が川内原発での水深の約三分の一から二分の一。注水スプレイ時間は約35分。

東電核災害では2、3号機は、格納容器の過圧が問題でベント、ベントと必死になった。その時でも東京電力は格納容器上部・ドライウエルの格納容器スプレイを行っていない。S/C(圧力抑制プール)へのスプレイ注水は行っているが、ペデスタルに水が溜まる、溜めるドライウエルの格納容器スプレイを行っていない。

溶融貫通・メルトスルーするとペデスタルの蓄水に溶融物が落下してくる。その場合、水蒸気爆発と溶融炉心ーコンクリート相互作用(MCCI)が起きる。2011年年初の事故時改定は溶融炉心ーコンクリート相互作用(MCCI)の抑制の方が、水蒸気爆発抑制よりも大事であると電力共同研究から最新知見で判断して注水を蓄水をするというもの。しかし、約一か月半後にはそれは実行されなかった。あれだけ格納容器の減圧、冷却の必要がありながらも冷却水スプレイ注水されなかった。

九州電力の主張する「実機において大規模な水蒸気爆発に至る可能性は極めて小さいと考えられる。」を一顧だにしない行動を、東電福島第一原発2号機、3号機の現場では採っている。電力共同研究にて得られ採用された「大規模な水蒸気爆発に至る可能性は極めて小さいから溶融貫通破損前のペデスタルに蓄水」は、確実なAMシビアアクシデントマネジメントと扱われていない。

今回の審査では、九州電力の主張を東電核災害の経験を踏まえて、かつ科学的に審査していない。規制委員会は、こうした東電核災害の経験を踏まえて川内原発の水蒸気爆発の危険性を科学的に再検討、再評価、再審査を行い、再度、意見公募を行うことを提案する。

また、東電核災害では溶融炉心ーコンクリート相互作用(MCCI)が起き、水蒸気、水素ガス、一酸化炭素ガスなどが発生し、格納容器は損傷している。そして、地下水の放射能汚染が生じている。落下直後から溶融物に冷却水を十分に注水していたら破損は防げていたのかも知れない。
 今回の審査書(案)では、原子炉下部キャビティへの注水、蓄水を認めたためなのか、MCCIや地下水経由の放射能環境汚染が見落とされている。地下汚染水対策の事前評価、審査が行われていない。この点は先日、意見送付した。
 下部キャビティに蓄水しないで落下後に冷却水を注水する場合のリスク、つまり溶融炉心・コンクリート相互作用のリスクと九州電力の下部キャビティに蓄水した場合のリスクを比較検討してほしい。熔融貫通に原子炉下部のキャビティやペデスタルでの蓄水対処の有利不利を明らかにしてほしい。その結果を示して、再度、審査書(案)をだしパブリックコメントを行うことを求める。


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