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福島県双葉町・宮城県丸森町ともに特に多かったのは鼻血・・双葉町民の健康調査(2012年11月) 報告書本文で追記② [被曝影響、非発がん、全般]

双葉町民の健康調査の中間報告
 
 
双葉町の町民の健康状態を把握するため、福島県の県民健康管理調査ではカバーされていないと思われる様々な症状や疾患の罹患を把握すること、比較対照地域の設定をしっかりと行うことを通して、どのような健康状態が被ばくや避難生活によるものかを評価・検証することを目的とした疫学調査 
 
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調査対象地域 3か所
福島県双葉町、対象人数7,056 名、回答割合 54.9%

宮城県丸森町筆甫地区・・福島県伊達市・福島県相馬市に接しており、福島第一原発からは直線距離で約50km、福島原発事故による放射能汚染地域 733 名、86.9%
滋賀県長浜市木之本町・・対照地域 6,730 名 56.1%

2012年11月に質問票調査
医師による診断や健診を行ったわけではなく、対象者による自記式の質問票を用いた。質問票を用いて健康状態を把握することは臨床の現場においても通常行われる有効な方法であり、このような調査では質問票がしばしば使われている。

所属する自治体を一つの曝露指標、質問票で集めた健康状態を結果指標として扱い、木之本町の住民を基準とし、双葉町や丸森町の住民の健康状態を、性・年齢・喫煙・放射性業務従事経験の有無・福島第一原子力発電所での作業経験の有無を調整したうえで、比較検討した。
 

多重ロジスティック解析を用いた分析
2012年11月時点で、主観的健康観(self-rated health)に関しては、滋賀県長浜市木之本町に比べて、双葉町で有意に悪く、逆に宮城県丸森町では有意に良かった。
更に、調査当時の体の具合の悪い所に関しては、様々な症状で双葉町の症状の割合が高くなっていた。

症状・・双葉町、丸森町両地区で、多変量解析において木之本町よりも有意に多かったのは、体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状であり、鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2、10.5)、双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8、8.1))。

2011年3月11日以降発症した病気も双葉町では多く、オッズ比3以上では、肥満、うつ病やその他のこころの病気、パーキンソン病、その他の神経の病気、耳の病気、急性鼻咽頭炎、胃・十二指腸の病気、その他の消化器の病気、その他の皮膚の病気、閉経期又は閉経後障害、貧血などがある。
両地区とも木之本町より多かったのは、その他の消化器系の病気であった。

更に、神経精神的症状を訴える住民が、木之本町に比べ、丸森町・双葉町において多く見られた。
 
被曝防護措置(避難)の影響
今回の調査の第一段階の解析では、所属する自治体を一つの曝露指標として利用した。自治体への所属が避難生活によるストレスや被ばくなどに関連していると考えた。双葉町では、避難生活によるストレスや初期の高濃度な被ばく(注:継続的に被ばくを受けている住民もいると思われる)、丸森町では避難生活はないが長期的な低濃度の被ばくの可能性が考えられる。今回、木之本町に比べて、双葉町において調査当時の主観的健康観が悪く、体の具合の悪い所が多く、平成 23 年 3 月 11 日以降発症した疾患・治療中の疾患が多いことなどは、原子力発電所の事故により避難生活を強いられたこと、又は被ばくの影響、どちらか片方だけの影響に説明を求めることは難しいと思われる。しかしながら、避難生活を強いられていない丸森町でも、調査当時に体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状が増加していること、表8で有意な結果を示す循環系疾患やアレルギー性疾患、痛風や腰痛のような代謝性・筋骨格系疾患など、様々な病気の発症が木之本町に比べ丸森・双葉両町でも発症していることを鑑みると、被ばくとの関連性を否定できない。特に、鼻血は今回の調査だけでなく、被ばくを受けた住民の訴えとしてよく聞かれており、被ばくによる何らかの粘膜障害もしくは微細血管障害が考えられるのではないかと思われる。 
 
被ばく量推定が今後必要
 一方、双葉町民内での検討においては、調査時点での避難先が埼玉県加須以外の関東地方や福島県内の住民において主観的健康観がやや悪かった。疾病の発症に関しては(埼玉県加須に避難している住民で腰痛などの発症が認められたが)さほど大きな違いを認めなかった。また、2011 年 3 月 12 日当日の住所地における SPEEDI により推定された外部被ばく線量や尿中セシウムより見積もった合計預託実効線量別でも比較検討したが、主観的健康観や疾病の発症など大きな差を認めなかった。また、表としては示していないが、(上の段落で注目した)調査当時数日間の鼻血に関しても、避難先別や SPEEDI・合計預託実効線量の線量別に検討しても大きな差は認められなかった。動向調査の資料なども利用したより詳細な外部被ばく量推定が今後必要になると思われる。 


結論は、震災後1年半を経過した2012年11月時点でも様々な症状が双葉町住民では多く、双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であった。特に双葉町では様々な疾患の多発が認められ、治療中の疾患も多く医療的サポートが必要であると思われた。主観的健康観は双葉町で悪く、精神神経学的症状も双葉町・丸森町で悪くなっており、精神的なサポートも必要であると思われた。これら症状や疾病の増加が、原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる。
 
福島県の県民健康管理調査においても、比較資料はないが、小児に肥満や高血圧などが高い割合で観測されたという報告がある。今回の調査結果でも、肥満や高血圧だけでなく、様々な疾患の発症が双葉町で高いことが示唆された。また、疾患だけでなく、様々な自覚症状を訴える方が双葉町や丸森町で多く見られた。
 これら症状の多発や疾病の多発を、避難生活に関連する要因又は放射線被ばくに関する要因のどちらかに説明を求める(整理ができる)ものばかりではないが、どちらにせよ原子力発電所の事故に起因していると思われる。

本年5月28日に、双葉町のほぼ全域が「帰還困難区域」に指定され、町民は、自宅に5年以上戻れないという宣告を受けた。避難生活が長引く中で、健康管理をどのように進めていくのか、継続して調査したり、町への支援を続けていく予定である。

調査方法によるバイアスについて
曝露を受けた住民が症状を積極的に報告しそのため過大評価し、このように上昇したオッズ比が生じているという指摘もされる可能性もあるが、それならば、全健康状況のオッズ比が上昇してくるはずであり、今回の結果(症状や疾病罹患のオッズ比の相違)を説明するものとならないと思われる。また、今回聞き取りを行った症状の中には、鼻血のように自覚症状でありながら客観的に判断できる症状がある。このような症状も有意に上昇しているということは、過大評価という理由だけでは説明されないと思われる。
 
 追記
 
全双葉町民にアンケート用紙を配って調査 
 
 中地重晴教授は、取材に対し、「調査結果は、昨年8月に双葉町に報告しています。町側は、そのことを忘れているのではないですか」
 
 双葉町の健康福祉課では、町が岡山大などに調査を依頼し、調査結果の報告も受けたことは認めた。報告を受けたのは、現職の伊澤史朗町長のときになってからだが、「担当者が退職するなどしており、詳しくは当時の書類を調べないと分からない」とし、5月16日夕までに双葉町が2014年5月7日、「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません」と小学館に抗議した経緯には回答はなかった。
 
 秘書広報課では、「鼻血を出す人がそんなに大勢いないことは、保健所の聞き取り調査で分かっています。岡山大などからの報告を受けたわけではありませんが、町民の健康管理については今後検討していきます」
 
 


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