SSブログ

将来世代の被曝被害 全体像の試論 [被曝管理・将来世代]

 将来世代とは、まだ生まれ来ぬ子供らです。その時点、たとえば東電核災害発災時点で胎児でもなかった将来に生まれてくる世代です。私はこの将来世代での被曝影響は、東電核災害のような放射能の広域汚染被害の本質的特徴であると思います。

14-0505a.jpg 東電核災害では同時に大津波で東北太平洋沿岸地域が甚大な壊滅的被害を受けています。それは、沿岸地域の社会、コミュニティーでは壊滅と言ってもおかしくない被害を受けたところもあります。しかし、そうした地域に他の地域から人が移り住むなどして、再建できます。869年(貞観11年)の貞観地震、1611年(慶長16年)の慶長三陸地震、1896年(明治29年)の明治三陸地震で、壊滅的被害を受けた地域社会は、そうして再建されてきました。
 東電核災害の被災地域にも、津波でそうした壊滅的被害を受けた地域社会があります。そうした地域に他の地域から人が移り住むなどされるでしょうか?今も放射線量で立ち入り禁止になっている地域には?それは、立ち入り禁止などの社会的規制が解かれれば、社会が再建されるでしょうか?規制が解かれても、被曝する線量が核災害以前や他地域に比べ高い状態です。
 チェルノブイリ事故で人が住まなくなった地域に野生動物が多数生息して、楽園、エデンの園のようになっていると伝えられています。しかし、種によっては「魅惑の森などではなく、いわば放射能によるごきぶりホイホイのようなものであり、動物たちは入ったが最後、出てこないのだと。」ツバメの「生存率と出生率の低さを考えると、この個体数は途切れなくやってくる移住者たちによって支えられていた」 出典・・チェルノブイリのいま – 死の森か、エデンの園か
「人間と細胞がよく似たハタネズミでは遺伝子の突然変異が22世代目にまで受け継がれていることが確認された。遺伝子が変異を起こすとハタネズミの胎児は普通、生まれて来ないが、まれに生まれたネズミは体が弱い。ハタネズミの生存率は非常に低いが、ネズミは多産であるので多く死んでも子孫を残すことには問題がない」 出典・・チェルノブイリから9000日後 低線量被曝が遺伝子に与える影響 参照・・世代を超えて蓄積される放射線損傷:チェルノブイリ降下物に慢性的に曝露された小動物
 この現象が、人間、ホモ・サピエンスに起こるかは判りません。元々出生率が人間は低いので、ハタネズミに見られる長期的影響をそのまま人間に当てはめて考えることはできません。 ただ、はっきりしているのは、誰も自分の子供や子孫でそれを試そう、解明しようとはしない事です。ツバメのように他の地域から人が移り住んで再建、社会維持はできない。

ホモサピエンスは「知恵のある人」という意味です。将来世代の被曝影響は、その知恵ではどのように扱われているでしょう。

  放射能、放射線は我々の五感では感知できません。、専用の検知器を調え、その観測データから放射能の種類や量、被曝量を評価する知的組織、研究・専門家集団を社会的に準備する必要があります。そして、放射線被曝の長期的影響は確率的に起こります。同じ空間放射線量の場所にいても、健康障害を不幸にして受けてしまう人と、そうでない人がでます。低い線量環境では、影響を受けてしまう人は数少なく、多くの人は影響を受けずに「放射能の放射線の影響なんて本当にあるの?」と考えてしまいます。
 各個人に関して健康被害が実際に起こるかどうかはわからない。しかし、集団、社会全体では確実に健康障害が発生します。それで、被曝管理も集団的に行う公衆衛生的なアプローチが必要で有効です。その健康を害する人の数はその地域の線量に依存しますから、退避や一時的避難、長期的避難、移住、食物制限などの低減手段を、線量値を目安にトリガーに設定して行う手法になります。
 その健康を害する可能性のある集団に将来世代が含まれているでしょうか?特に長期的避難、移住で問題になります。移住などしなかった場合は、トリガー値以下の線量を被曝しながら、将来世代は生まれ、育まれるからです。現在の移住のトリガー値の設定方法、その思想を検討すると、将来世代は視野に入っていません。

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0