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日本の農業でのグリーン・ニューディールとは 2009年 [地球温暖化]

2009年2月、虹屋小針店で配布した「畑の便り」の加筆・再録

 「グリーン・ニューディール政策」、オバマ米大統領が打ち出した2年間で8000億ドル(約72兆円)規模の景気対策の目玉です。「現在の金融危機は、気候変動問題に取り組む機会でもある。経済危機が拡大する今、緑の成長が数百万の雇用を創出する」と国連事務総長も同様の提案を行っており、日本版グリーン・ニュー・ディール、「緑の経済と社会の変革」市場規模100兆円、新たに220万人の雇用を生み出す案も1月初頭にだされています。

白紙に戻して考える

 ニューディールの語源はトランプゲームの手持ちのカードをすべて捨てて、新たにカードを配り直すことです。政策的には、既存の利権構造を無視して、将来本当に必要になる事柄について、公共投資を行うことがニューディール政策です。オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策は、エネルギー安全保障と雇用回復という非常に大きな国家的要請に対して、長期的な視点でもっとも有効な政策は何かという戦略的検討に基づいている、環境、雇用、経済成長の“一石三鳥”を狙う政策と評価されています。
 
米国のそれの中核の一つは、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電(クリーンテックと呼ばれる)です。「オバマは、クリーンテックがこれからの米国経済を牽引していく重要な産業であることを明解にしている。太陽熱、風力、地熱などのクリーンエネルギーは地元資源を活用するところにこそ意味があり、米国に製造業が戻ってくる契機になるはず」と期待されています。

  その土地に豊富にある太陽光、風、地熱、バイオマスなどの再生可能資源を活用したエネルギーの生産です。これらはいずれも個々の装置の生産出力が小規模なため、送電損失、輸送のためのエネルギー消費が大きく響き、これを避けるため地産地消になります。 
 
  
 オバマ大統領が描く未来の米国、麻生首相の未来の日本
 
 
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 太陽は照るときもあれば曇るときもあり、風も気ままに吹きます。つまり光や風力など再生可能エネルギーは生産量、電気出力が常時ゆらぎ、変動します。ですから、地元で消費しない余剰分を不足している地域に送り、逆に不足の時は送ってもらう。これは、現在の中央集中管理型の電力網では総電力の約3~5%程度しかクリーンエネルギーを受け入れることができず、「スマートグリッド」と呼ばれる次世代電力網が本格的利用には不可欠とされ、米国版のグリーン・ニューディールでも取り上げられています。

  オバマ大統領が描く未来の米国は、その地域の地元資源を活用しエネルギーを生み出し消費し、不足分を地域外に頼る。いわば半自給自足の細胞がスマートグリッドでネットワークする社会です。日本版はどうでしょうか?

  日本という国は、何を目指して、そのような生活の未来像をめざして、どんな経済活動を行うか?政府案の「緑の経済と社会の変革」をみても良く分かりません。地球温暖化/エネルギー供給/食糧危機といった世界規模の問題と、国内での所得格差、過疎による限界集落といった地域格差といった国内問題の解決と、雇用創出と“一石三鳥”の策として、よく考えてあるとは、到底おもえません。

地域農業の再生

 日本の大部分の地域では、農業が重要な産業です。農業の活性化なくして、地域経済の活性化、地域格差の是正はありえないと思います。それは、世界規模の問題の食糧危機への日本の貢献、日本が輸入量を減らすことで需給を緩和する、になります。
また農業が供給しうるバイオマスエネルギー利用は、クリーンエネルギー利用は、先ほど見たように、技術的に地域での地産地消を半自給自足です。

  つまり、環境に配慮した農業技術を用いた、自立的エネルギー自給と地産地消と戦略的に地域外販売を目指した品目をもつ農業を一つの核とした自律・自立した地域社会・経済が日本が目指す社会の一つの姿であり、それによって生まれる雇用で失業者をなくす、そのための公共投資が日本版グリーン・ニュー・ディールの重要な部分ではないでしょうか。  
 
環境問題対応の農業とは?

 農業生産に必要な主なものは、肥料や農薬、水と土です。化学肥料のうちリン、カリウムは石油と同じく埋蔵量が限られています。窒素肥料は製造に多大なエネルギーを要するため、これも減らす必要があります。つまり、堆肥や厩肥(家畜の糞尿)の活用が環境対応です。化学農薬は、それ自体程度の差はあれで環境に毒です。これは、害虫の天敵利用などの生物農薬などの活用が環境問題対応です。こういった防除技術は、散布時期など畑・田の状態のきめ細かな観察・管理ができる技能をもった農業者が必要です。
 
水と土だけはどうあがいても代替はききません。世界的に見ると水は、灌漑農業に使う地下水がだんだん枯渇してきています。土の問題は、表土流出です。農業生産に適しているのは、地表から20、30cmぐらいの表土で、表土1cm作るのに、200年~300年かかるとも言われてます。アメリカなどでは、農業の大規模化によって、機械も大型化し、表土が深く抉られ風や雨で流出しやすくなっています。
 
日本の水田は、この二つの問題がありません。それを耕作放棄している。そして農業者の高齢化によって、どんどん増えていく。食糧不足、危機が言われている現在、これを無くす全て活用することが環境対応です。   
 
24億人に役立ち、しかも最善、最安の温室効果ガス削減策

  ところが、今日でも、これに比べてはるかに多い量(世界エネルギーの10%)、多くの地域の24億の人々の暮らしをバイオマスが支えています。薪、炭、乾燥牛糞など家畜排泄物、作物残滓などの”伝統的バイオエネルギー”です。家庭の暖房や灯り、調理のために燃やされています。24億うち20億の人々は1日2ドル以下で暮らし、16億の人々は、送電網・線が整備されていない地域で電気を利用できません。
 
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 乾燥牛糞で電球をともす事はできません、ラヂヲを聞いて知識を得ることもできません。しかし、近代技術は日本の持つ技術はこれらをバイオガスに加工することができます。それを使って、電気と熱、調理や暖房に使える熱を併給する装置を作れます。24億の人々が手頃な費用で、自分が生産した、環境的に持続可能なモダンで効率的なバイオ・エネルギー消費に転換するのを助けることができます。バイオガスにならない残りの残渣は、肥料ですから耕地に施せます。
 
  また女性や子供に強いられる薪など収集労働、煙による健康被害を削減することになり、生活の質の向上をもたらします。”キッチン・キラー”、薪、乾燥牛糞など伝統的バイオマスで調理するさいの煙の吸入により、毎年マラリア以上の100万人以上の死を途上国の女性らにもたらしています。 そして、非持続的な森林資源の消費を押さえ、炭素排出を抑制できます。
 
 我々にとっては「輸送などの燃料としてよりも、熱電併給のためにバイオマス資源を利用するのが、今後10年における温室効果ガス排出削減のための最善にして、最も安上がりの方法だ」(国連のバイオエネルギー影響評価報告、2007年5月公表)です。
 
 そして、日本は南北に長く、亜熱帯から寒帯までありますから、様々な土地・気象にあった熱電併給の効率的なバイオ・エネルギー利用技術を開発できます。  
 
日本農業で使う化石燃料を減らす

 熱電併給の効率的なバイオ・エネルギー利用技術を開発できます。
 日本では、どのような利用が考えられるでしょうか。電気は分かりますが熱は農業で使う化石燃料の削減に使えます。野菜栽培や育苗などをするハウスの暖房に熱が使えます。
 
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野菜など水分が多く鮮度が重要で、長距離の輸送に適さない農産物があります。これらは、地産地消が望ましいので、都市周辺の農村で栽培して都市で消費するのがよいのです。こうした園芸作物のハウス栽培は、周年供給には不可欠です。そのハウスの暖房に使えます。今は軽油ですが、それに代替できます。

 農業での熱源としては太陽熱、風力も問題なく使えます。風力はそれでもって板などを回転させ、摩擦で熱をとりだします。風力発熱はオランダなどで実用されています。電力利用では風の強弱による発電量の瞬時の揺らぎが問題ですが、熱源利用では問題になりません。技術的には蓄熱して60℃位の温度があれば発電も可能です。 

また、トラクターなど農業機械で化石燃料を消費する日本農業では、地産地消のバイオエタノールなどでも、化石燃料を減らせます。  
 
 北海道農試 風力ー熱変換技術
 
 風力ー熱エネルギー利用技術の現状 2011年
 
 耕地集積で雇用を生み出す

 このように使うバイオマスは、米や飼料などの栽培や畜産部門から供給できます。稲わらや飼料・加工用米や家畜の糞尿、敷き藁などです。
 米などの穀類や飼料は水分含有が少なく、長距離輸送、長期間の貯蔵が可能です。お酒、米粉などに加工し販売が可能です。畜産も同様です。つまり、地方都市を中核とした半自給圏から、外部に販売する産物に育てられます。

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 米。日本人が食べる短粒のお米は生産過剰ですが、水田では飼料用や加工用、アジアで不足気味の長粒米を栽培できます。大規模化すれコスト低減しアジアへの輸出も可能と言われています。そうなれば、アジアの食糧不足を緩和できます。輸入に頼っている飼料を地域で生産することで、日本が輸入量を減らせます。飼料にしているトウモロコシ等は人間の食料にもなりますから、結果的に食糧不足緩和になります。

飼料や米など穀類の栽培は、耕地を広く使います。土地利用型で、大規模になるほど有利な、コスト削減など規模の利益がある農業部門です。畜産は飼料が経営を左右します。ですから、堆肥や生物農薬などを使いこなせる有能な農業事業者に、耕作を集積する。耕作放棄地や後継者がいなくて何れそうなる耕地を集めて生産をする仕組みを作る。新潟市には200haの耕作放棄地があるそうですから、20ha規模の農業経営が10個つくれます。その事業所で働く雇用が生まれます。飼料用米、加工用米はそれを扱う仕事=雇用を生みます。

このためには、事実上の耕作放棄地にお金を支払っている減反政策と、耕作放棄しても名目上は農地にしておけて、相続税など土地保有負担が軽くすむ農地制度が問題です。

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