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事実を知りたくないらしい、田中・原子力規制委・委員長7/17① [核のガバナンス]

科学は、どの立場から見ても疑いようのない事実から出発するものだと思ってきましたが、原子力規制委の田中委員長はちがう。「(東電福島第一原発で)起こった事実を明らかにすることも大事ですけれども、今、私どもにとって大事なことは、(規制などに反映する)どういうところを汲み出すかというところなので、そこの辺りが一番優先度が高い」だそうです。これは汲み出すこと=規制などに反映することが先に決まっていて、取り上げる事実、無視する事実があると受け取れます。「先ず、事実の検証をやってから」(泉田・新潟県知事)という意見は、田中委員長には耳障りでしょうね。

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7月10日に以前福島第一原発に勤務していた元東電職員が、東京電力に原子炉データの公表を求める質問書を出しました。出した木村俊雄氏は東電学園を卒業後、1983年に東電に入社。福島第一原発では燃料設計管理、交換する核燃料の配置、数などを最適化する仕事や福島第一での、運転員が使用する原子炉の運転手順の指示書の作成にも携わっていたそうです。その仕事で知っている、様々な運転トラブルの検証で使うデータが一部しか出ていない、公表されていないので、全面的な公表を求める質問書です。

異常事態が発生すると原子炉の水位、圧力、出力、温度、冷却水の循環状況など各号機で80〜100種類以上の計測器の数値を100分の1秒単位でハードディスクに記録している過渡現象記録装置のデータです。木村さんは①原子炉出力、②炉心流量および再循環系データ(流量、温度、圧力、ポンプ速度、ポンプ振動)、③原子炉圧力、④原子炉水位、⑤原子炉温度、⑥給水系データ(流量、温度、圧力)、⑦主蒸気系データ(流量、温度、圧力)、⑧格納容器圧力の主要データの公表を求めています。東電は「すべて保存している」。

事故調査は「最低でも上記8点の項目を同一の時間軸上に並べてプラント挙動を把握することから始める」のに、そうしたことがされていない。東電の事故報告書はこうした評価をせずに結果だけを記載しているのはおかしい。さらに、地震の影響による「冷却材喪失事故がなかったというのであれば(②の炉心流量および再循環系の)データを示して説明すべきだ」としています。

参照 質問書など 後藤正志のプログ
   記者会見などの様子 木野龍逸(きのりゅういち)のブログ

これを取材した木野さんが7月17日に田中委員長に質しました。


○記者フリーのキノと申します。
東京電力の福島第一の事故直後の100分の1秒ずつのデータをとった、過渡現象記録装置のデータがあるのですが、これを東電は現状で全体の3分の1程度しか公表していません。東京電力の運転関係、燃料設計の関係をやっていた元社員が先週記者会見をして、このデータを全部きちんと並べて精査をしないと、事故直後にプラントにどういった影響があったのかが判断できないという指摘をされています。
残りのデータに関して、東京電力は保有しているのですけれども、自ら公表する考えはないことを記者会見で表明しているのですが、例えばこれを委員会の方で、報告聴取なりの形で求める考えはあるかどうか、その辺をお伺いできますか。

○田中委員長 
今の話は、私は全然知らなかったので、申し訳ないですけれども、今後、事故調査をやる上で、必要があれば、そこは求めていくことになると思います。

○記者 
事故調査の上で、必要かどうかの判断というのは、例えばいつ頃、どういう形で決まるものなのでしょうか。

○田中委員長 
今、1F(東京電力福島第一原子力発電所)の事故調査の委員会がありますので、その中で、一つ一つ状況を明らかにしていきましょうということで、二度程現地調査にも行っています。

○記者 
現地調査といっても、プラントの状況自体は、1も2も3も自由に中に入れる状況ではないのが現状だと思うんですが、一方で、データというのは、物があれば、今すぐにでも分析が始められるわけで、そこの辺の優先順位というのは、どういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。いつ入れるのか分からない、しかも、入っても、自由に調査もできないようなプラントの現場調査を優先するのか、今あるデータの分析を優先するのか、この辺の考え方というのは、どう整理したらよろしいでしょうか。

○田中委員長 
私がいろいろ申し上げることではないとは思うのですが、今までも政府事故調、国会事故調、民間なども含めて、ヒアリングとか、いろんなことを含めてかなりやっていますので、そういったことをベースにして、起こった事実を明らかにすることも大事ですけれども、今、私どもにとって大事なことは、どういうところを汲み出すかというところなので、そこの辺りが一番優先度が高いんだと思います。
事故の調査の仕方については、現地の状況もありますから、今、おっしゃるようなこともあるかもしれませんし、別にそれを否定しているわけではないのですけれども、今、私がこうすべきだ、ああすべきだと言う問題ではないと思っています。

○記者 
基本的には、今の事故分析の検討会の方で、もしこういったデータがあるのであれば、考えていくことになるわけですか。あるいは事務局、規制庁の方で、何らかの対応をしていくのか、その辺はどうでしょうか。

○田中委員長 
次々と散発的にそういう話が聞こえてきますが、どの程度のデータなのかも分からないので、メディアが色々取材して、色々探っていただくのは結構なのですけれども、それはそれとして参考にしながらということになるのではないかと思います。これが全部出たら、全ての事故の原因が分かるみたいな言い方をされるんだけれども、そんな簡単なことでもないような気がします。

○記者 
全部の原因が分かるというか、原因を分析する上での最低限のデータではないかと思えるのですけれども、それが公表されていないことが問題であって、現状、委員長としては、今すぐ公開して分析する必要性というのは、余り感じられないということでしょうか。

○田中委員長 
そんなことは申し上げていないです。事故調査をする上で、必要であれば、それにとどまらず、あるものは入手してやっていくことになると思います。ただ、物事を詰めていく時に、どういう手順で、どう詰めていくかということについては、いろんな方のお考えがあると思いますけれども、今、事故調査の専門委員にそこをお願いしているわけですから、そちらを優先すべきだということだと思います。

○記者ありがとうございます。



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データの保存状況 東電

東京電力の資料によれば、地震(2011・平成23年3月11日(金)14時46分18.1秒)から津波到達15時40分頃を過ぎた16時ごろまでの1号機、2号機、3号機の過渡現象記録装置のデータがあります。正に「原因を分析する上での最低限のデータではないかと思える」データです。田中委員長は、そのデータを規制委が入手し、東電とは別に分析し評価することに、これほど消極的なのでしょうか??

私は、科学とは事実から出発するものだと考えますので、先ず事実・生データを入手する確保することは重要だと思うので田中委員長の態度は、科学者の態度として解せない。

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「これが全部出たら、全ての事故の原因が分かるみたいな言い方をされるんだけれども、そんな簡単なことでもないような気がします。」田中委員長。木野さんは「全ての事故の原因が分かるみたいな言い方」はしていません。田中委員長は、日本人・日本社会の安全文化でもそうですが、有りもしないことを勝手に想定して非難する論法、ワラ人形論法を近頃、良く使う。
wikipedia ワラ人形論法

田中委員長の「(東電福島第一原発で)起こった事実を明らかにすることも大事ですけれども、今、私どもにとって大事なことは、(規制などに反映する)どういうところを汲み出すかというところ」という発言には、規制委の委員長としての適格性が疑われます。事実に基づかない、架空の原因を汲み出して、新基準などは作っているのでしょうか?

東電が保存しているデータの解析・評価のうちから「一部データについてはこれまで報告済みのデータと今回追加報告(2013年7月17日)するデータの内容から不要と判断」して、規制庁に報告していません。役に立つかどうかは、規制庁が規制委が判断することではないでしょうか?

2007年7月16日の中越沖地震の柏崎刈羽原子力発電所の不適合(様々なトラブル)の公表は次のようでした。
東京電力柏崎刈羽発電所は、不適合(様々なトラブル)の外部への公表を、大きく発見・発生し報告された当日か翌営業日に公表されるⅠ~Ⅲ区分と定期的に取りまとめて、通常は月に1回公表される"その他"区分して行っていました。
その区分判定は、不適合管理委員会が行う内規です。その委員会は、安全品質担当副所長を委員長、品質・安全、広報、運転、保全などの管理職が委員です。
不適合管理委員会が毎日1回開催され、「当発電所における不適合の発生については、不適合管理委員会にて審議を行い、その是正活動状況を本ホームページで公表し、また、報道機関へ情報提供しています。」
この不適合管理委員会が審議を終えていない不適合、留め置かれた不適合は発表が遅れます。公表を引き伸ばせます。実際、16日の地震発生時のけが人の数が公表されたのは8日後の24日に7人で、その後に増えていきます。 詳しく

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この過渡現象記録装置のデータも、不適合管理委員会のような公表・報告を管理する委員会があって、このデータは報告・公表、このデータはまだ早い、このデータは報告不要と審議・判定している、公表・報告を仕切っていることが「一部データについてはこれまで報告済みのデータと今回追加報告(2013年7月17日)するデータの内容から不要と判断した。」との東電記述からわかります。

委員長が「(東電福島第一原発で)起こった事実を明らかにすることも大事ですけれども、今、私どもにとって大事なことは、(規制などに反映する)どういうところを汲み出すかというところ」という姿勢は、規制委の汲み出す「どういうところ」に合わせて、阿吽の呼吸で報告する事実を東電は管理することが、田中委員長の意に沿った適切な行為です。

木村俊雄氏のよれば、地震の影響による冷却材喪失事故の有無の評価には、炉心流量および再循環系のデータが重要な判断材料です。それを「整理に時間がかかっている」などを口実にズルズルと公表・報告が遅れれば遅れるほど、「東電核災害に地震は直接の原因ではない」という規制委の汲み出す「どういうところ」を否定する、合理的疑念を持たれることがない。そのデータを公表・報告すると地震原因説に客観的根拠を与える可能性があるなら、公表しないのが一番良い手段です。

東京電力福島第一原発1号機、2号機、3号機の過渡現象記録装置のデータを規制委・規制庁は、持っていません。公表されていません。報告する事実を東電が如何様にも、自社の利益に合わせて管理できるようになっています。その方が「世界一厳しい新基準」をつくったと自負する田中委員長には、プライドが守られて都合がよい。「先ず、事実の検証をやってから」(泉田・新潟県知事)という意見は、田中委員長には耳障りですね。


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