SSブログ

フィルターベントに隠れて耐圧強化ベント? [AM-ベント、排熱]

新潟県・原発に安全管理に関する技術委員会で、東京電力は耐圧強化ベント、3.11東電核災害で満足にできなかったベントをフィルターベントの代替手段でやる手順だと云っています。

米国生まれの耐圧強化ベント
 1986年チェルノブイリ事故で格納容器の性能、特にBWR Mark 1格納容器がクローズアップ。Mark1格納容器の体積が他の格納容器に比べて小さいということから、NRC米国原子力規制委員会はMark1に対して格納容器性能改善を要求する。格納容器からの除熱に失敗するTW事故シーケンスでは炉心損傷(メルトダウン)前に、格納容器サプレッションプールS/Cから蒸気をベントすれば格納容器の過圧破損を防ぎ、それによって炉心損傷の防止に効果がある。既存のAC系(格納容器に窒素を充填する不活性ガス系)やSGTS(非常用ガス処理系)を用いたダクトベントでは、運転員が配管類の過圧破損を恐れて操作をためらうことがあり得る。これを防止するために高圧力対策を施したS/Cを通する「耐圧強化ベント」の設置を例示している。
 NRCはMark1格納容器プラントに耐圧強化ベント系を事業者が自主的判断で付けるよう、付けないならその理由を明らかにしNRCの承認を得るよう求めた。

 NRCのシビアアクシデント研究NUREG-1150から格納容器からのベントだけでは、どの事故シーケンスでも過温による格納容器破損が生じる。しかし改良型自動減圧系ADS、バックアップスプレイ、バックアップ圧力容器注水などの対策、これらすべてを格納容器ベントと組み合わせて採用した場合には大きなリスク低減効果が期待できると考えられた。ベントと代替注水(それによる崩壊熱除去 Decay Heat Removal:DHR)が行われない場合は、格納容器からの除熱に失敗するTW事故シーケンスの炉心溶融確率が増え全体の炉心溶融確率が約2.6倍に高まる。
 ADS、バックアップスプレイ、バックアップ圧力容器注水などの対策や崩壊熱除去:DHRの問題は個々の炉(原発)で異なるなどの理由からNRCは個別に審査、個別プラント評価(IPE Individual Plant Examination(個別プラントの体系的安全解析)計画で扱うとにした。NRCは先ず「耐圧強化ベント」の設置を求めた。

日本の物まね耐圧強化ベント

耐圧強化ベント設備イメージ.jpg

日本もこれに倣って導入した。平成24年2月24日(月)の原子力安全委員会 原子力安全基準・指針専門部会
第13回 安全設計審査指針等検討小委員会の資料と議事録から要約抜粋する。
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/anzen_sekkei.htm

 山中康慎氏(電気事業連合会/東京電力からの出向者?)が解説している。
 それでは電事連から耐圧強化ベントについてという資料でご説明させていただきます。全てのBWRに共通なもの、平成6年ぐらいのアクシデントマネジメントの整備ということで追設をしたもののお話をということで調べていたのですが、全て確認することができなかったものですから、東京電力で確認できた範囲ということで今日はご説明させていただきたいと思っております。

1枚捲っていただきまして、格納容器ベントの概要ということでございます。図の方は見ていただきますと分かりますとおりでございまして、追設のベント配管、SGTSのラインの途中から追設のベント配管を使って排気筒まで経由して放出するというラインでございます。

この要求の流量でございますが、崩壊熱の1%に相当する蒸気を排出できることということで、この基本条件が格納容器圧力が最高使用圧力において基本流量以上を確保できることということになってございます。
概ね後ほど一番最後のページでお示ししますが、福島第一の3号機、BWR-4のプラントで大体35t/hぐらいということになります。

それでは、このベント管の圧損評価がどうなっているのか。つまりきちんと排出できるのかといったことについて3ページ目の資料でご説明をさせていただきます。格納容器から排気筒までのベントパスに要求流量を流した時の配管等での圧力損失を評価をし、圧力損失の大きさがベント開始時の格納容器圧力、つまりその時は格納容器最高使用圧力よりも高いところで運用されておりますが、ここは最高使用圧力より小さくなることを確認してございます。評価は配管を通過するガスの圧力低下に伴う比重量の減少等を考慮し、区間を、配管の直線部分だとかエルボーだとか、結構細かく区切ってやったりしておりますが、そういうところを考慮して計算をしてございます。

イメージ的にはその次、1枚捲っていただいて5ページ目のようなイメージになります。既設の配管、追設のベント配管、既設のSGTS(非常用ガス処理系)の配管から排気筒の内管。ここでは四つぐらいに示してございますが、一番最後の6ページ目の図を見ていただきますと、1F-3の例では、ここをもう少し細かく区切って9区間ぐらいに分けて計算をしているということになってございます。
圧力がちょっとずつ下がっていく。圧損で下がっていくのですが、最後の放出点のところで大気圧以上であるということであれば放出ができる、このような圧評価を実施してございます。

結果1F-3.jpg


4ページ目はこの圧損評価で用いる計算式でございまして、ダルシー・ワイズバッハの式という、この円管の直管部を流れる時の圧損を表す式を用いて計算をしてございます。
 6ページ目に詳細な結果を示してございますが、格納容器の出口の方ですね。区間の一番最初の部分、ここで最高主要圧力である4.35となっています。そこから出ていく時の配管の外径が450㎜、45㎝です。配管、継手の項と摩擦係数、比容積、流速と圧損を計算しますと、この圧損ΔPが出てまいりしまて、この区間で0.02。ですので、この区間の末端の圧力が4.32ということになりまして、それが次の区間2の入力ということになります。これを9区間に分けて計算をいたしまして、最終的に排気筒の出口のところで3.8㎏/㎝2 absということで大気圧1.03㎏/㎝2 absよりも高いということになりますので、排出ができると。

このようなそれぞれのプラントに実施をいたしまして、この耐圧強化ベントを使って原子炉の減圧と除熱ができるというような評価を実施しているのが、我々が導入しております耐圧強化ベントということでございます。私からのご説明は以上でございます。(議事録より)

アーリーベント
格納容器の設計最高使用圧力よりも小さい、約1気圧低い圧力でもベント出来ることを確認してある。東京電力は「ベントについては,当社としても米国[設計最高使用圧力以下で行う]と同様アーリーベント(低い圧力でのベント)を実施する手順を整備しており」と新潟県:安全管理に関する技術委員会に説明している。その手順は、こうした試算に基づいて整備さているのだろう。その裏付けが有ったればこそ、3.11の夜半には官邸対策本部では炉心損傷後に設計圧力Pdに達したらベントする方針を採ったのであろう。それを示唆する文書が22時付、24時付である。
参照・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-10-08-3
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-05-18

福島第一の現実は甘くなかった
2015年5月20日なって3.11東電核災害時の2号機でベントは出来なかったらしいと発表された。残留放射能福島ベント失敗.jpgによる放射線らしき線量が配管から検出されない。どのようなメカニズム、故障・損傷によるものか、その解明に東電は関心が無いようである。
 原因が東電の云うAO弁(空気操作弁)の作動用の圧搾空気がなかった、MO弁(電動駆動弁)の電気がなかったという東電核災害で実際に直面した問題だとすると、空気圧縮機を持ち込んだ、バッテリーをかき集めたという対策を採ったうえでベント操作をしているのだ。それでもなお失敗したかもしれないのだ。
 新たに、予め窒素ガスボンベ、バッテリーを用意することにしたのだ。原因が分からなければ、それで十分なのか、確認できない。作動用空気を送る配管の耐震性はCランク、一番低い耐震背が弱い配管で地震で損傷した可能性が指摘されている。そうなら幾ら窒素ガスボンベから作動用ガスを送っても、途中で漏れて役に立たないと考えられる。AO弁(空気操作弁)が開かなければ、フィルターベントも出来ない。東電核災害の解明が終えない限り、役立つ対策は出来ない。


タグ:ベント
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0