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小児甲状腺癌の2年発生説で「過剰診断」は云えるか [被曝影響、がん]

 神経芽腫と小児甲状腺癌2年発生説 http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-12 の続きです。

福島県の子供らの小児甲状腺は、どのような経過を辿っているのだろうか。
 発表されている検査データから、甲状腺の腫瘍全体、良性の腫瘍を含んだ縮小や増大の動きがわかります。ガンは悪性の腫瘍ですから、厳密には違います。ただ悪性腫瘍とわかるのは手術後ですから、事前に判るのは良性の腫瘍を含んだ動向です。

本格検査-04.jpg
細かくは第19回「県民健康調査」検討委員会(2)二巡目・本格検査・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-05-21 を見てください。
福島県の子の甲状腺の腫瘍は、2011年10月からの1巡目検査でA1判定、つまり3~2.5年前には見つからなかった者では35.4%で腫瘍が顕れ、8千人に1人は「悪性ないし悪性の疑い」の腫瘍です。その際に腫瘍が見つかった、腫瘍が2014年4月からの2巡目検査の時点では既にあったもので、縮小または消失した者は9.5%、増大した者は1%弱です。7200人に1人の割で「悪性ないし悪性の疑い」の腫瘍です。
縮小、消失の実態
縮小または消失は検査責任者の鈴木眞一福島医大教授によれば「結節だと思われたものが異所性の甲状腺に埋没している胸腺であったりとか、また甲状腺内だと思っていたのが血管を見ていたり、周りのリンパ節組織を見ていたりということで判定が違うということがございます。」
 「B判定で5mm以上の結節といったものが・・のう胞の中にしこりがあると結節に判定せざるを得ないのですが、それが二次検査でみたとき、または時間経って見直したら、すべてが液体だったとなれば、のう胞に変わる。のう胞に変わるとのう胞は20㎜までの(B判定)基準なのでA2に変わってしまう。」
 「前回がB判定で今回がB判定の者は基本的にのう胞を伴っていますから、・・・(腫瘍は)30%位が縮小しております。」
 「多くは液体を伴うのう胞の液体の部分の変動の方が一番、時間的には多い。数日というと極端ですけどしょっちゅう変わることがあります。
清水修二座長代行 のう胞の液体が結構、こう増減するので、判定そのものも増減するということですか。
鈴木眞一教授 はい。」(第18回福島県「県民健康調査」検討委員会議事録、14頁)
 縮小の内容は、元々大きさが変わり易いのう胞の液体が検査の時に減ったからだ。むしろ「結節がもともとBだった人が、2回目もBだった人の平均腫瘍径はだいたい・・1.5ミリしか増大していない。」16頁

つまり、「甲状腺がんはゆっくりと、穏やかに成長するという医学的知見」にそった振る舞いをしている。玄妙氏の云う短期間に成長する悪性腫瘍は何処にあるのか。
「悪性ないし悪性の疑い」の腫瘍は1巡目の検査で見つかった腫瘍とは別の腫瘍です。つまり、なかった人でも既にある人でも発生している新たな腫瘍の中に、玄妙氏の唱える短期間に成長する悪性腫瘍がありうる。
それはA1⇒Bの235人中8人で約30例に1例の割で、A2⇒Bの480人中6人で80例に1人である。
過剰診断説との両立は消失(自然退縮)で可能だが
 玄妙氏の云う「短期間に成長する悪性腫瘍」説と「世界の報告例からすると、甲状腺がんの潜伏期は最短でも 4年から5年と考えられる。」との見解、「甲状腺がんはゆっくりと、穏やかに成長するという医学的知見」が両立するのは「短期間に成長する悪性腫瘍」が前臨床発見可能期間・滞在時間・Sojourn Time に非常に増加が遅くなる、非増殖性に変化する、縮小の過程に入るという変化をする場合です。「最短でも 4年から5年」「ゆっくりと、穏やかに成長」は過剰診断説の根拠ですから、過剰診断と観察されてる短期間に成長する悪性腫瘍が両立する場合です。
 それらは自然現象なので4Sの神経芽腫と同様に、臨床症状を呈してからそうした変化をする例が必ずあります。福島県での検査結果が常日頃の状態を示しているとするなら、「短期間に成長する悪性腫瘍」の発生率は非常に高いので、そうした臨床症状を呈しても縮小の過程に入り消失(自然退縮)する例が《しばしば経験》されるレベルで観察がかならずあります。しかし、実際にはない。
二巡目検査では1割弱しか起きてない
 二巡目の3月31日時点での結果から、消失例が見られます。A2⇒A1がそうです。ただこれには嚢胞でA2だった例が液体がなくなった、たまたまその時に検査した例がありそうです。B⇒A1も消失です。これは結節ですから、「結節だと思われたものが異所性の甲状腺に埋没している胸腺であったりとか、また甲状腺内だと思っていたのが血管を見ていたり、周りのリンパ節組織を見ていたりということで判定が違う」という例が含まれるでしょう。しかし、それらが全部ではないでしょうから、消失は1割弱は起きてる。

 ただし、4Sの神経芽腫と同様なプログラム細胞死の仕組みで全例で起こることではない。1割弱しか起きない、例外的な現象です。大概は低増殖性で「ゆっくりと、穏やかに成長する」。
甲状腺微小がん(平均径7ミリ)を患う平均年齢52才の成人群でのデータでは、減少は1割強である。
 
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「玄妙氏仮説 甲状腺がん短期発生、自然消滅」を検証する cyborg0012さんのツイートまとめ(2015.6.12作成)」  http://togetter.com/li/833913

スクリーニング 表01.jpg 玄妙氏の新説の「短期間に成長する悪性腫瘍発生している」という部分は当たっている。それは「甲状腺がんの潜伏期は最短でも 4年から5年と考えられる。」という考えが間違っているということです。CDC(疾病管理予防センター)が2013年に公表している「CDCレポート」によれば、20歳以上の大人の甲状腺癌の最小潜伏期間は2.5年、小児の甲状腺ガンの1年です。最小潜伏期間が 「4年から5年」ではなく1年とか2年とすると、2011年10月からの1巡目検査、2014年4月からの2巡目検査は既に潜伏期を過ぎようとしている及び過ぎた小児の甲状腺ガンが検出されることになります。スクリーニング用語でで前臨床発見可能期間・滞在時間・Sojourn Time にあるガンと何らかの臨床症状を顕している癌です。

 新説の「前臨床発見可能期間に縮小の過程に入る、自然消滅に向かう変化を起こす」という点は、間違っています。そうした変化は例外的です。むしろ同時期に潜伏期・前臨床発見可能期間が4~5年の癌や10~20年の癌が発生したり、成長中と解する方が事態を理解できます。rタイプの発生頻度は頻度は低く「甲状腺がんはゆっくりと、穏やかに成長するという医学的知見」からsタイプが多いと考えられます。
 青森県では六ヶ所村再処理工場の本格的稼動にそなえて、小児ガンの症例を2000年から登録・収集。15年間で小児ガン430例が集計されています。その小児ガンで甲状腺ガンは1例も報告されていない。小児甲状腺ガンが一巡目で117人、青森県の人口約130万人と福島県の人口約200万人(2011/3)を考慮に入れても、福島県で異様に多発していることが判ります。
rタイプ、sタイプ、tタイプの同時多発
 この多発は短期間に成長するrタイプだけでなく、潜伏期が4~5年のsタイプや10~20年のtタイプも異様に多く発生したでしょう。まずrタイプが検出される。
 1巡目の検査では腫瘍が見つからなかった子供の35.0%が腫瘍ができてA2判定、0.4%が大きな腫瘍でB判定、そのB判定から超音波画像以外の情報から細胞診が行われた中から「悪性ないし悪性の疑い」腫瘍が出ている。A2判定にはsタイプが含まれているのではないか?発生頻度はsタイプが多いと考えられますから、それが異様に多発して今後見つかってくることになるのでは?
 また20歳以上の大人の甲状腺癌の最小潜伏期間は2.5年ならば、2014年春以降に大人のrタイプ甲状腺癌が顕在化しているとみられます。子供だけでなく、大人の甲状腺検査と早期治療も必要だと考えます。
「NPO法人『あいんしゅたいん』の被曝影響モデルとアポトーシス誘導」で、発ガンを検討する際には生体全体への目配りが欠かせず、その現実を無視した数理モデルでは突拍子もない結論が導かれると論じました。
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-03
 玄妙氏がスクリーニングの発見割合とその後の罹患率の数理的モデルパターンから、「甲状腺ガン、短期間に成長する発生、自然消滅説」を考案しました。それは、福島県の小児甲状腺検査は過剰診断であるという自説を再説、再構築するものです。福島での検査結果やこれまでの知見から考察すると、後段の自然消滅は例外的に起こる事象ですから一般化できません。あいんしゅたいん同様、数理モデル内での合理性を追求する「つじつま合わせ」に注力し、現実の事態、データとの整合性を軽視しています。
 玄妙説の前段「短期間に成長する甲状腺ガン発生」は、あり得ることです。むしろ短期間に成長するrタイプ、4~5年のsタイプや10~20年のtタイプと様々なタイプの甲状腺癌が同時多発していると解する方が事態を理解できました。

タグ:発ガン
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