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原子力災害対策指針(改定2015年4月)(番外④)屋内退避-フランスの即時対応フェーズ [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]

第1回は屋内退避(籠城)先、日本の家屋はフーの板の家かブーの藁の家でブルーム放射能雲のオオカミさんにはかないません、放射線遮蔽、外部被曝、低減係数のことを検討した。第2回は放射能摂取抑制、防護係数の件。最低限必要な新鮮空気を取り入れ・換気である程度はブルームを屋内退避(籠城)している屋内に容れざるを得ない。エアロゾル状の微粒子の放射能への対策の目安が防護係数PF。第3回はそれでも呼吸で入るガス状の放射能と微粒子への対策。被爆前に服用する安定ヨウ素剤と米国での使い方、事前配布を検討した。
米国img10.jpg
フランスの即時対応フェーズ
フランスの事故対策は8つの基準事態に束ねられてグループになっている。海域での事故が一つ、国外の事故が二つ、輸送時の事故が一つ、状況が未判明な事態で一つで地上の原発に関しては3つの基準事態がある。フランスの発電用商業原子炉はフランス電力公社(EDF)の加圧水型原子炉が58基、19サイトで稼動している。(2014年12月現在)
 その研究から事故発生から原子炉圧力が徐々に高まって1-2日後に非常に大きな放射性物質の放出が始まるタイプの事故割合、可能性が高いとされ、それに対応した対策が立てられていた。例えば、チェルノブイリ事故から3年後までに設置されたベントフィルターは、中の砂のろ過材を乾燥し使えるまでに1日間は電熱で加熱乾燥した空気を送り込む。オフサイトでは発電所から半径5km圏を「狭域区(Petit périmètre)」、5~10㎞圏を「広域区(Grand périmètre)」とゾーン分けし5㎞以内の狭域区は24時間以内に避難、5~10㎞圏の広域区は24時間以内に屋内退避(籠城)するとなっている。
 これには協調対応フェーズ(phase concertée)の名がついている。2014年3月2日付の国家対応計画では、事態3とした。この国家対応計画は、「福島の教訓を取り入れた」としている計画である。
重大な原子力または放射線事故に係る国家対応計画・・http://www.sgdsn.gouv.fr/site_rubrique146.html

 フランスの原子力防護安全研究所(IPSN)で研究が進み、放射性物質の放出がより早く起こり得るケースがあるとわかった。1997 年から2000年かけて、対応が検討された。
 2000年の「オフサイト緊急時計画の改訂」に“6 時間以内に・・放射性物質の外部放出”が起こるような事故において、“事前に決定された活動を即時実施する”と記載された。これは、即時対応フェーズ(phase réflexe 反射的)と名付けられている。2014年3月2日付の国家対応計画では、更に事態1「1時間未満で放出が開始され」「数時間の放出で終わり」「影響の範囲が数㎞位のその原発の緊急時計画・PPIの計画範囲に収まる中規模の被害」と事態2「6時間未満で放出が開始され」「数日から数週間に及ぶ放出があり」「その原発の緊急時計画・PPIの計画範囲を超える範囲に重大な被害が及ぶ恐れがある」の二つに分けた。
即時対応フェーズの反射的事故対応
 即時対応フェーズ(phase réflexe 反射的)は、現地の県知事(フランスは中央政府が派遣する官選知事)=対策本部長はASNフランス原子力安全規制機関 を通してプラントの状態を評価し、健康への影響を予測することができる国の専門家による助言を受けるまで約3時間かかりその時間の余裕はないので、発電所からの第一報を受けたら反射的に即座に対策を発動する。
 発動は第一報で①安全注入系が作動しない一時系破断事故②残留熱除去の完全喪失③蒸気発生器配管の破裂④原子炉建屋への航空機落下⑤排気筒で210 Bq/m3 を越える放射能を検出したときなどと判断基準クライテリアが各原発である。
半径2km 以内に反射的に屋内退避(籠城)指示
 発電所の半径2km 以内の「直ちに危険となる区域(Périmètre de danger immédiat)」に、即座に屋内退避(籠城)を指示する。それは特別な吹鳴パターンでなるサイレンや広報車、ラジオ、テレビにより伝えられる。警報を受けたら、周辺の住民は、「最寄りの建物」あるいは「自宅」に逃げ込み、戸や窓を閉め、空気取り入れ口をふさがずに換気扇のスイッチを切るとされている。「堅牢な」建物(bâtiment en dur)に屋内退避することで放射能摂取による内部被ばくは2分の1に、ブルームによる外部被ばくは8 分の1から10分の1に減少すると見込まれている。
そして、ラジオ等によって当局からの指示を傍受していなければならない。

安定ヨウ素剤の服用指示
 安定ヨウ素剤の投与、服用の指示はASN を中心とした原子力安全当局、とくに放射線防護原子力安全研究所IRSNの助言のもと、原子力施設外で甲状腺被曝の予測線量が50mSv以上と予測された場合、予測される時刻の2時間前に、県知事=対策本部長が住民に指示する手順になっている。即時対応フェーズ(phase réflexe)では、専門家による助言を受けるまで約3時間かかると評価されているから予測線量の助言を待たずに服用指示が出せる。事態1「1時間未満で放出が開始され」と事態2「6時間未満で放出が開始され」では国家対応計画の対策リスト一覧(フランス語)では摂取を指示とある。
国家対応計画の対策リスト一覧・・http://www.sgdsn.gouv.fr/IMG/pdf/fiches_mesures_plan_nucleaire_fevrier_2014.pdf の26頁
事前配布
このような短時間で安定ヨウ素剤を配布できるであろうか?
サンローラン・デゾー原子力発電所の緊急時計画・PPI には、住民に屋内に退避するよう指示しておきながら、安定ヨウ素剤を取りに来させるのは矛盾であり、また市職員や救急職員に配布させると、彼らが不必要に被ばくする危険性があるからヨウ素剤の事後の追加配給は退避時間を避けて行うと合理的、人権を重視した記載がある。また放射性物質放出の危険が明らかになった時点で各コミューン(約9割が人口2,000 人未満が約9 割のおおよそ日本の大字、丁目のレベルからいわゆる集落に相当する人口規模の行政単位)の長が指定した配給場所で安定ヨウ素剤の追加配給を、屋内退避が実施される前までに行う。つまり、即時対応フェーズでは実質的に事後の配布、追加配給は行われない。
 フランスでは、即時対応フェーズで屋内退避の対象となる「直ちに危険となる区域」(半径2km圏内)を含む狭域区(半径5 km 圏内)、広域区(半径10 km 圏内)の住民に対して安定ヨウ素剤を“事前に” 配布している。服用の量、方法は下図。フランスも日本も安定ヨウ素剤は処方箋薬だが、フランスでは事故時は子供用は各家庭で作る手順だ。
フランスi服用mg20.jpg
 現地の県知事=対策本部長がASNフランス原子力安全規制機関を通してプラントの状態を評価し、健康への影響を予測することができる国の専門家による助言・勧告を受けれるようになる(約3時間後)と、事態3の協調対応フェーズ(phase concertée)と手順が同じになる。例えば、IRSN放射線防護原子力安全研究所 がKr X コードを用いて行う放射性物質の環境拡散予測解析を使って屋内退避から避難に移行する範囲(セクター)を評価したりする。

 即時対応フェーズでの屋内退避は一般的に10時間以内とされている。家族が別の家屋でバラバラだと集まろうとするし、飲料、食品や医療が必要になるだろう。人々が何時まで続くかと不安になるといった理由で屋内退避は一般的に10時間以上は継続すべきでないとされている。
 屋内退避後の防護措置は①避難(1週間程度)②退去③一週間以上の帰還を前提とした一時移転④移住が選択肢。どれを選ぶかは決定は、ASNが承認したIRSNや事業者(フランス電力公社や軍など)の予測評価を基に県知事が下す。知事の指示に従わず公共サービスや水道などの供給が停止している自宅に留まっても、線量が直ちに影響が出るレベルでなければ、とがめられない。
こうした例から、日本の2015年4月の原子力災害対策指針の改定を検討してみる。

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LesGabe

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